ここに帰るスタンプ(同棲百合。恋人と姪っ子と三人暮らし。姪っ子は名前のみ登場)
──ちゅ
「……吃驚した」
美雨が目を瞠る。
「さーたんったら、こんなとこでちゅーするんだもん」
確かに、ここは道のど真ん中。夜とは言え、いつ誰が通るかわからない近所の道だ。
街灯が等間隔に並び、決して暗くは無い帰り道。
「どしたの?」
「別に」
私は、答えずにまた歩き出した。彼女もまた同じように歩き出す。
繋いだ手を子どものように振りながら。
「えー、気になる。教えてよ」
「恋人にキスするのに理由が要るのか? って何処かの誰かはよく言うなぁ」
「あは、ここの私がよく言うね」
小牧が友だちの家へ泊りに行く日。
こうして気まぐれに、彼女を迎えに行くときがある。
今夜もそうで、そういうとき、彼女はいつもご機嫌だ。
子どものようにはしゃぎ、にこにこと笑い、何かをずっと喋っている。
「だろ?」
それがついさっき、ふと何処か遠くを見るような目をしたものだから。
「なら仕方ないかあ」
お前が居るのは、私の隣だろうと教えたまでだ。
……まあこれも、こいつの受け売りだけど。
「お前だってするからな」
「何を? さーたんにちゅー?」
私が誰かを思い出すとき、目敏く気付いてキスで隣へと戻して来る。
「そう」
「そりゃするよー。だって私、櫻子の最愛だもん♡」
「はっ、よく言う」
「……違うの?」
「そうでなけりゃキスしてない」
「だよねー」
美雨が私の手を引っ張った。誘われるままに、キスをする。
柔らかく、少し乾いた感触。
「そういや、唇乾いてんな」
「リップクリーム塗り忘れたの」
言わないでよ、と笑う彼女に、乾いてても気にしない、と言う代わりにまたその唇へキスをした。
END.




