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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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あなたの夢に会いにゆきたい(歳の差薔薇。菓子職人×元塾講師。トーリー×颯太)

 休日前夜。

 ソファーで映画を観ていたのだけど。

「……トーリーさん」

 隣の彼が、こくりこくりと舟をこぎ始めた。

「ん……なんでしょう……」

「眠いなら、もう寝ましょう」

 トーリーさんが楽しみにしていた映画だけれど、配信だからいつでも観られるし、今日のところは止めにしといた方がいいだろう。

 ぽんぽん、と肩を叩けば、イヤイヤと首を振られる。

 ……彼は年上だし、中年なのだけど、そういう仕種がいやに似合う人だ。可愛い。

「まだ……ねむ……ない……です……」

「説得力ないなぁ」

 溶けた口調に、苦笑する。瞼だって半分閉じかけていた。

 もう一度、ぽん、と肩を叩く。

「ほら、ベッドに行こう」

「や、です」

 トーリーさんはそう言うと、僕を抱き寄せ、頬ずりをした。

 犬を飼ったことは無いのだけど、大型犬に懐かれたらこんな感じなのかな、と毎度思う。

 もしくは大きな猫か。大きな猫は、かなり人懐こいらしい。

 思わず頭をよしよしと撫でてしまう。

 彼は背が高いから、こういうときじゃないと撫でられない。

 そして背の割に(いやだからこそか?)トーリーさんは頭を撫でられるのが好きなようで、今もうっとりと目を細めている。

「こんやは、そーたさんと……もっといっしょにいたいです……」

「同じベッドで寝るのに?」

「みるゆめは、べつべつ、ですから……」

 見る夢は別々。

 彼は時折そう言って、寝るのを先延ばしにすることがあった。

 それは大抵、あまり触れ合えていないときだ。

 確かにここ最近はお店が忙しく、閉店したらへとへとで、お風呂に入るとすぐベッドへ直行、会話も最低限だった。

 お店が繁盛するのはありがたい。でも触れ合いが少なくなるのは……僕だって寂しかった。

「……同じ夢を見られたらいいのにね」

 つい、本音が零れた。それこそ、夢物語みたいなこと。

「ほんとうに……」

 更に強く抱き着いて来る体温と重みが愛おしい。

 が、愛おしさだけでは、どうにもならない現実もある。

「ほらほら、本格的に寝られちゃったら、僕は運べないよ。起きて下さい」

「んー……わかりましたぁ」

 観念したのか、トーリーさんは頭を振るとがんばって目を開けた。

 のろのろと配信を止め、寝る準備をする彼に、

「今日は、手を繋いで寝ましょうか」

 そう提案してみた。

 すると、トーリーさんはパアアと目を輝かせ、

「はい!」

 と元気な返事をした。

 ──彼の夢の中へ、会いに行きたい。

 そんな子どもじみたことを本気で願うくらい、彼の笑顔を好きだと思った。


 END.

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