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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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嬉しくなるから、名前を呼ぶよ(同棲百合。恋人とその姪っ子と三人暮らし。姪っ子は名前だけ登場)


 ──櫻子は、私に名前を呼ばれるのが好きだ。


「さーたん!」

 綽名《あだな》で呼ぶときも。

「櫻子さん」

 ちょっと改まって呼ぶときも。

「櫻子さま!」

 調子よくへりくだって呼ぶときも。

「……櫻子」

 どうしようもない切実さを込めて呼ぶときも。

 どんなときでも、

「──何だよ」

 と言って、必ず返事を返してくれる。

 呆れ顔や、顰め面、照れ顔、真顔、その時々浮かべられる表情は違うけど。

 一瞬ふわりと上がる口角と、愛おしそうにこちらを見る眼差しは変わらない。

 それを見ると、私はいつでも、好きの気持ちが胸いっぱいにぐーっと広がる。

 嬉しくなる。

「さーくらっこさん」

「何……って、のしかかるな。暑い」

「ね、ね、さーたん。チョコアイス、ラスいち半分こしよー」

「小牧は?」

「小牧ちゃんは、みかんの方食べたいって」

「……じゃあ、うちらで半分こするか」

「やった! さっすが、さーたん! 話がわかる!」

「調子のいいやつ」

 だから私は、いつだって。

「えへへ。でもマジでありがと、櫻子」

「まあ、お前が食べたがってたアイスだしな」

「へへへへー。さぁたん、だーい好き!」

「はいはい」

 何度も何度も、彼女の名前を呼んでしまうのだ。


 END.


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