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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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昔の私も今の私も、君はどちらも抱き締めてくれるのかしら(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済)

「いいねぇ、芽瑠《める》ちゃん。似合う!」

 私の昔の浴衣を着た芽瑠ちゃんが、恥ずかしそうに寝室から出て来た。

 実家から持ってきたそれを、夏祭り本番前に一度着てもらったのだ。

 大人びた百合柄は、華やかさより淑やかさの方が勝つ。

 その雰囲気は芽瑠ちゃんの可憐さととてもよく合っていた。

「そうですか? 嬉しいです」

「取っとくもんだね、昔の浴衣」

「これを、学生時代の桐子《とうこ》さんが着てたんですね」

 浴衣を見下ろしながら、芽瑠ちゃんがしみじみと言う。心無しか嬉しそうだ。その様子にこちらまで嬉しくなる。

「うん。高校と大学の頃かな」

 帯だけは新しく買ってプレゼントした。

 綺麗な薄緑の、芽瑠ちゃんにも浴衣にも合いそうなものを。一目惚れして買ってしまったのだ。

 というより、その帯を買ったので、浴衣を持ってきたというか。

「きっと綺麗だったんだろうなぁ……」

「いや〜、着られてる感あったと思う。帯がまた、浴衣の柄と比べて子供っぽかったし」

「そうだったんですか?」

「うん。だから、芽瑠ちゃんのが着こなしてる。絶対」

 真顔で頷くと、彼女は困ったように眉を寄せた。けれども、すぐに微笑を取り戻し。

「……でもそれを聞いてからこれを着ると、そんな可愛い学生時代の桐子さんと、一緒に居るみたいに思えます。嬉しい」

 そんな殺し文句を口にする。

 薔薇色の頬に、上目遣い。

 まったく。可愛い顔で可愛いこと言ってくれちゃうんだから。

「……今の桐子さんは、可愛くない?」

 だからつい、だるい絡み方で甘えてしまう。

「もちろん可愛いし、綺麗だし、恰好良いです!」

「あっはは! ごめんごめん、でも、ありがと」

 年上の駄目な甘えに、それでもすぐ真剣に返してくれる。そんなところも、可愛い。可愛過ぎる。

 私は堪らず、彼女をギュッと強く抱き締めた。


 END.


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