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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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貴女のやきもちが可愛い(同棲百合。充希×清風)

 お風呂上がり。リビングに戻ると、先にお風呂を済ませていた充希《みつき》が、リビングの床で柔軟をしていた。

「柔軟中すみません、充希。お願いがありまして」

「ん? いいよ」

 前に倒していた身体を戻し、充希が快く承諾してくれる。

 お願いの内容を聞かずに快諾するところは、彼女のいいところであり、心配なところだ。相手は選んでいると、言ってはいるけれども。

 それはさておき。

 私は持っていたものを差し出し、にっこりと……充希がよく好きだと言ってくれる、ちょっと無邪気そうに見える……笑みを浮かべた。

「これを、腰に貼ってもらっても?」

「……湿布?」

「はい」

 むっと充希の眉が寄せられる。

 その顔を見て、私は苦笑した。

 笑顔作戦も、あまり効かなかったようだ。

「充希は、湿布が嫌いですよねぇ」

「別に、嫌いじゃないよ。私も使うし」

 充希の手が、自分の前を指した。私は理解して、彼女の前に座る。パジャマの裾を捲り、腰を晒す。

「でも、私が湿布貼ってるの、そんなに好きじゃないでしょう?」

 充希は、私が湿布を貼っているといつもちょっと険しい顔になるのだ。それでもこうして頼めば、自分では貼りにくい腰や背中に貼ってくれるのだから、本当に充希は優しい。

「……清風《きよか》は貼り過ぎなんだ」

 私は、腰のこのあたりと摩りながら指示した。

「そうですか?」

「ここまで凝る前に、整体師《わたし》を頼れっていつも言ってるだろう」

 充希の指が、確認するようにそのあたりを押し「ああ、ここか」と呟く。

 その押し方が気持ち好く、思わずほうと息を吐いた。

「でも、整体もマッサージも、毎日は駄目なんでしょう?」

「それはもちろん。……けど、清風は頼らなさ過ぎる」

 充希《わたし》が居るのに、という言外の言葉を感じ取る。

「湿布には頼る癖に」

 湿布だって貼り過ぎるのは良くない、薬なんだから、と続ける彼女に、私はつい小さく噴き出した。

「……何も可笑しなことは言ってないはずだけれども」

「ああ、すみません。確かに可笑しくはないです、大丈夫」

 湿布がしっかりと貼られた感触を確認し、振り返った。

 つまらなそうな声音が表す通り、少し不機嫌な顔をした恋人が居る。

 私はその顔を両手で包み込むと言った。

「たかが湿布にあなたが嫉妬していると思うと、可愛くて」

 むむっと更に充希の眉が寄る。

「『たかが湿布』に頼り過ぎてるのは、何処の誰だ?」

「さて、いずこのどなたでしょうねぇ?」

 くすくすと笑う私の唇を、彼女の唇がそっと塞いだ。

 離れようとする充希のそれを、今度は私が追いかけて塞ぐ。

 そのまま、何度か向きを変え、口付けを交わした。触れるだけだったものが、徐々に舌を絡めた深いものへと変わっていく。

「……腰、痛いんじゃ?」

 熱を帯び始めた眼差しに、それでも労わりを滲ませてしまうのが充希で、彼女のそういうところを私は一等愛していた。

「優しくしてくれたら大丈夫です」

「……優しくする」

 きっと言葉通りそうしてくれるのだろうと思うと、嬉しいやら愛しいやら擽ったいやらで。

 私はすべてを込めた笑みを浮かべ、また彼女に口付けた。


 END.


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