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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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永遠に残したいけど、この眼にも映したい(同棲百合。写真家と恋人)

 木々の濡れたような緑が見守る中、ビーチサンダルに履き替えた彼女が、恐る恐る川へと入って行く。

 川は驚くほど澄んでいて、川底の石の数まで数えられそうだった。

「つめたっ! やっぱ川は冷たいねぇ~!」

 彼女が、笑顔で叫ぶ。その顔を、

 パシャリ

 シャッターを切って、綺麗に切り取る。

「あ、見て見て、魚。あっち魚いる」

 パシャッ

「すーごい透明、すーごい気持ち良い! 最高だ~!」

 パシャッ

 ファインダー越しに見る彼女の笑顔を、はしゃぐ様を、あますことなく、すべて切り取っていく。

 私の心だけではなく、永遠に残る記録として。

「ちょっと」

 パシャリ

 次に撮った彼女の顔は、ちょっとおかんむりの表情《かお》をしていた。

「なに?」

「写真撮ってばっかじゃん」

「写真家だから」

「そうだけど! さっきも景色撮ってたでしょ」

「うん。あれはお仕事。こっちは趣味」

「恋人《わたし》の写真を撮るのが趣味かよ」

「趣味だね」

 彼女が少し頬を赤らめたところを、またパシャリ。うん、きっといい出来。可愛い。

「じゃなくて! そろそろ一緒に遊ぼ」

 ほら、と手を差し出され、私は渋々カメラから手を放す。

 胸のあたりに収まったカメラを見て、彼女は満足げに頷いた。

「よし! ほら、入った入った」

 彼女の手が私の手を取り、川へと導く。先にビーチサンダルに履き替えておいて良かった、と思いながら川に足を浸すと。

「つっめた!」

 予想以上の冷たさに……何なら一瞬痛みすら感じた……声が出た。

「あっはは! わかる、覚悟してても驚くよね」

 私の様子に、彼女がさっき以上ににっこり笑う。

 ああ。

 なんて可愛い。

 百点満点の笑み。

 シャッターを切って永遠に留められないのが口惜しい。

 けど。

「ね、あっちまで行ってみよ」

「ん」

 この眼で直接見て、脳に直接刻み込むのもまた、やはり良いものだ。

 永遠に残せずとも。

 煌めく水面と同じくらい眩しい彼女の笑顔に、そっと目を細めた。


 END.


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