買い出しの朝、はしゃぐ貴女たちの顔を(同棲百合。恋人と姪っ子と三人暮らし)
「今日は遠スー行くか」
休みの朝食時、ふと思い付いて私はそう言った。
ちなみに遠スーとは『我が家から遠目のスーパー』の略である。お値段が近くのスーパーより少しお高めだが、その分、質が良いかつ置いているものの種類が豊富なところが良いスーパーだ。
「遠スー!? 今日遠スー行くの!?」
まず、美雨が反応した。うるさいくらい、顔が輝いている。頬に米粒まで付けて、小学生男子のようだ。お前は一体いくつなんだ。
「遠スー……!」
次に、小牧。こちらも静かながら、キラキラと目を輝かせていた。何故うちは、現役小学生の方が落ち着いているのだろう。
「お前ら、本当に好きだな。遠スー」
「そりゃね」
ねっ、小牧ちゃん! と美雨が笑いかけると、小牧がこくこくと首を縦に振った。
「楽しいの、いっぱいある……!」
楽しい、ねぇ。
確かに色々と置いてあるスーパーではある。が、あくまでスーパーの域を出ない範囲だ。
子どもが見て、そこまで楽しいものだろうか。
「小牧ちゃん、あとで一緒にネットチラシ見よ。何買うか相談しよ」
「うん!」
キャッキャと盛り上がる話題のあまりの主婦感に、少々心配にならなくもないが。
「いつも通り、調味料を見に行くんだよね?」
「ん。ドレッシングとポン酢が無くなりそうだから。あと、みりんと塩もか」
「ドレッシングは、前に見かけて気になった奴があるんだよね」
「あの日向夏の……? 私も気になった」
「小牧ちゃんも? じゃ、それにしよ」
「値段と応相談」
「そんなに高くなかったよ。さーたんもきっとお気に召すはず」
「食べたことも無いのに、どんな自信だ」
「あ、櫻子ちゃん。みかんジャムももう無いよ」
「あれ、もう無かったか」
「大変、補充しとかないと。小牧ちゃんの大好物だもんね」
「うん!」
「あとでメモ共有しといてくれ」
「はいはい、今しちゃうねー。あれ、スマホ何処だ」
「そこ」
「あった、ありがと」
「楽しみだなぁ……」
「ねー!」
浮かれ気分の恋人と姪っ子を見るのは、やはりいつでも気分がいいものだ。
頬が、勝手に緩む。
ずっと、こうしてご機嫌に笑っていて欲しい。
「あ、美雨ちゃん。あのクッキーは安くなくても欲しい……な」
「もちろん買うよ! あ、あと気になってた最中とミニゼリーも買っちゃうか!」
「勝手に決めんな。お菓子は一人一つまで」
ただし、楽しさに流され過ぎないよう、そこのところは気を付けさせてもらうけど。
えー! と不満そうに声を上げながらも恋人は相変わらず楽しそうで。姪っ子も、にこにこと機嫌良く笑っていて。
今日の買い出しも、楽しいものになりそうだった。
END.




