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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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子どものあなたに少し会えた(同棲百合。充希×清風)

 連休の半ば。お昼ご飯のあと。

 今日は家で過ごすと決めたので、おのおの好きなことをしていた。

 清風《きよか》はソファーで読書(昨日行った美術展の図録がお供だ)を、私は、その傍で筋トレを。

 たまに会話を交わしたりして、穏やかに過ごしていたのだけれど。

 うとうと……かくんっ

 少し前から、清風が舟をこぐようになった。

 それでも、かくん、となったところで、いつもハッと顔を上げる。そしてそのあとすぐに図録へ視線を戻すので、眠りの国には、まだ入国していない。

 しかししばらくすると、また舟をこぎ出す……。

 その様子を、スクワットをしながら窺っていた。

(今朝の掃除は、けっこう大掛かりになってしまったから。仕方ないか)

 早起きだったし、そろそろ眠気が訪れるのも当然だろう。

 だが、彼女は決して眠気に屈さず、必死で図録にかじりついている。

 そのムキになっている様が子どもっぽくも見え、とても可愛らしい。

(昨日、図録で展示を見返すとはしゃいでいたものなぁ)

 スクワットを終え、今度は足を前後に開いた。上体を真っ直ぐにしたまま股関節と膝を曲げつつ、昨日のことを思い返す。

『いい展示でした! ずっと見ていたいくらい!』

 そう言って目を輝かせていた顔は無邪気で、まるで少女のようだった。

 幼い彼女を垣間見た気分に浸れ、非常に良かった。

 こういう瞬間を、私は殊《こと》の外《ほか》愛している。

 私たちは、お互い成長してから出会った。

 だからどうしても、小さな頃から知っていたかったな、という気持ちが常に何処かで燻っている。

(でも)

 うとうと……かくんっ

 何度目かの「ハッ」の瞬間を目撃し、思う。

(しんどそうだ)

 そろそろ、第三者から一時休止を促した方がいいだろう。

 私も休憩しようと思っていたタイミングだったし、ちょうど良かった。

「清風」

「……みつき。筋トレ、おわったんです?」

 溶けるような眼差しと口調に、思わず苦笑する。

 眠気の方が勝ってきていた。

「うん。隣、座っても?」

「もちろん!」

 ふにゃりと嬉しそうに彼女が笑う。

 その笑みもまた何処か幼げで。愛おしさが胸いっぱいに広がった。

 ソファーへ腰かけると同時に、彼女の頭に手を伸ばす。そしてそのまま自分の膝へ頭を導く。

「……へ」

「眠いんだろう。少し仮眠を取った方がいい」

 手に持っていた図録を代わりに持って、脇へ置いた。

「でも」

 不服そうな彼女の額を撫でて言う。

「すっきりした頭で見た方が、昨日の感動を思い出せるよ」

「……確かに、言われてみれば」

 私としたことが、と冗談めかして言った清風が、照れた笑みを浮かべた。

「じゃあ、このまま甘えちゃってもいいですか?」

「もちろん」

 私の答えに、彼女の微笑がまた、ふにゃりとした柔らかいものへと溶ける。

 愛おしさが胸に収まりきらず、「おやすみのキス」をついたくさん送ってしまった。

 


 END.



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