癖の自覚と無自覚と(百合。真面目×自由人)
休日の夜。リビング。
テレビでYouTube動画を流し、二人で見るともなしに見る。
だらーんとしたこういう時間も、悪くない。
「こういう動画見てるとさ」
「はい」
今流れている動画のタイトルは、『例の会員制スーパーに来た!』。タイトル通り、某スーパーの探訪動画だ。
「少しだけ行きたくなるよね。行かないけど」
「ちょっとこの近くの店、検索しますね」
「聞いて。行かないけどって言ったよ」
スマホいったん置いて。
「ミイさんが興味あるなら、私、会員になります」
「そう言うと思ったから、行かないって言ったんだよ。年会費、お高めでしょ」
馨くんの奉仕癖は、前もってブレーキをかけておかないと。気付いたら暴走してた、贈り物爆買いしてた、なんてこともあるものだから。
「でも、本当にいいんですよ?」
「やだよ。こういうとこ行ったらさぁ、私テンション上がっちゃって、要らんもん買いそうだもん」
楽しくなっちゃうと、歯止めは遥か彼方へと飛んでいく。
しかし、そういう自分を自覚しているのは、偉いと思う。いや、そうでもないか。そうでもないです。
「そうなった私を、馨くんは止められる?」
「……楽しそうなミイさんを止めるのは至難の業ですね」
キリッとした顔で、何を言っているのか。この場合は止めてくれ。
「でしょ。駄目だよ、ああいうとこはストッパーも一緒に行かないと」
「ミイさん、そういうところ真面目ですよね」
「嫌?」
「いえ、最高です」
「私も、たまに暴走しちゃう馨くん、好きよ」
「ありがとうございます」
照れたように笑う馨くんは、可愛い。少し目を伏せ、はにかむのだ。
「ただ、暴走した記憶はあまり無いのですが……」
「無いかー。……まあ、無くてもいいか」
一応、私は自分が好きに動いている(というか好きにしか動けない)ことを知ってはいる。知っているだけで、矯正はしない。だから、馨くんが自分の暴走を認識出来てなくても気にしない。
お互い様だ。
「ところで、会員にならなくてもあのスーパーの物が買える、再販店なるものがあるそうです」
「何それ面白そう」
「物も小分けになっていて、寧ろ本店より買いやすいという意見もありますね。ただ、会員価格ではないので、お値段は少々上がるらしいんですが」
「そのへんは仕方ないね。……うん、そっち行きたいかも」
「ちょうど我々の活動範囲内に一軒ありますよ。明日、行ってみます?」
「行く」
「楽しみですねぇ」
「ね」
私たちは凸凹で、でもだからこそ、きっとこうして毎日が楽しい。
END.




