戯れの止め時は(百合。幼馴染同士女子高生。朝子×星音)
夏休みの登校日。
終わると普段通り、二人で朝子の部屋へと帰った。
初めはお菓子を食べながら喋ったり、互いに図書室で借りた本を読んだりして、いつも通り過ごしていたのだけれど。
今、私たちはお互いをギュッと抱き締め合っていた。
冷房は効いているものの、やはり熱い。柔らかさと同時に確かな形をしっかりと感じる。
鼻先に朝子のシャンプーの香りが過ぎった。
彼女の手が、私の頭を優しく撫でている。その感触と熱は、擽ったいような、心地好いような、不思議な感覚を私にもたらした。
(どうして、こんなことに)
始まりは、ついさっきのこと。
「……星音」
本から顔を上げ、朝子が言った。
「抱き締めても?」
私も本から顔を上げ、彼女を見た。首を傾げて問う。
「いま?」
「いま」
即答だった。彼女の顔は真顔で、抱き締めるという行為を宣言する割に、まったく照れたところが無かった。
「いい、よ」
それが少々不服だったので、ついつっけんどんな答え方をしてしまう。
しかし朝子は、気にした風も無く。寧ろ、ふっと小さく笑い、嬉しそうにこちらへ腕を伸ばして来た。
そうして、今。
私たちは、互いを抱き締め合った状態で居る。
正確には、足を投げ出し座っている朝子の、両脚の間に収まる形で私が抱き締められ、そして彼女を抱き締め返している状態だ。
これは私が彼女に身を預けている、と言った方が正しいのかも知れない。
「……」
朝子の手が、私の髪を梳いている。丁寧に、そっと。たまに指で毛先を遊ばせながら。
(これ、抱き締めてるというより)
何を思い立ったか。彼女が、いきなり私の耳を食んだ。
「ひゃっ」
生温かい感触がして思わず身を竦めた私に、くつくつと朝子が楽しげに笑う。
(いじってるって言った方が正しくない?)
悔しくて、やり返してやろうと口を開けた。
が、いざ耳を前にすると気恥ずかしくなり。結局口を閉じ、頬へキスするに留めた。
それでも擽ったかったのか、朝子も少し身を竦めた。
ちょっと、満足。
(けど)
こういう戯れは、何処が終わりなのだろう。
ちら、と視界に入ったベッドにカッと身体が熱くなった。
(違う違う。期待とか、そういうんじゃないから)
恥ずかしさを紛らわすように、私は朝子に強く抱き着いた。
END.




