美味しい夏休み(歳の差薔薇。菓子職人(店長)×元塾講師(店員)。トーリー×颯太)
お店が、遅めの夏休みに入った。
初日の今日は二人とも少し遅く起き、朝ご飯をのんびり食べた。
今はダイニングで食後のお茶を飲みつつ、夏季休暇中に作る和菓子について相談していた。
「今年も、わらびもちは作りたいです」
「うん、僕も食べたい。去年のほうじ茶のやつ、美味しかった」
僕らは、というかトーリーさんは、長めのお休みの度に和菓子作りに勤しむ。
僕は、そのお手伝いをする。
彼のもともとの習慣で、今は僕ら二人の習慣となった。
「たくさんの味を作るのはどうでしょう? ソーダ味やこくとう味にchallengeしたくて」
「カラフルで良いですね。……カラフルと言えば、白玉も食べたいなあ」
「おととしの、あんみつですか?」
「うん。見た目も可愛かったし。あれも美味しかったなって思って」
「わらびもちと白玉あんみつは、けっていにしましょうか」
「いいの?」
「もちろん! ただ、おはぎもchallengeしてみたいのです」
「ああ、前に食べたあの紫蘇の実入りの?」
「そうですそうです。あれを、さいげんしてみたいのです」
真剣な顔で、トーリーさんがノートにレシピを書いていく。
「おそらく、このはいぶんだと思うのです」
「もう見当ついてるんだ。すごいね」
「ちょっと、じしんは無いんですけど」
そう言いながらも、彼の声は何処か弾んでいた。
(本当に、お菓子作りが好きだよね)
普段作っているのとは違う和菓子ではあるけれど。休みでも、彼はこうして、お菓子作りについて考えている。心から楽しんで。今もそのヘーゼルの瞳は、きらきらと輝いている。
これが、彼の……そして僕の……お休みだ。
手伝う僕も楽しんでいるから、いつの間にか、僕も彼に染まってしまったのかも知れない。
そのことについて、当然ながら悪感情は無い。どころか。
(ちょっと嬉しい……なんて)
恥ずかしいから、言わないけれど。
「作るの、楽しみだね」
「はい!」
にこにこと微笑むトーリーさんに、僕も頬が緩む。
この夏休みも、きっと美味しくて楽しい。
END.




