特別好きになる理由(百合。真面目×自由人。大学時代。第三者視点。※自由人さん居ません)
部室に入ると、先輩が一人だけ、ご機嫌にスマホを眺めていた。
お疲れ様ですと互いに挨拶を交わし、とりあえず、彼女の斜向かいに腰掛ける。
先輩は、相変わらず嬉しそうにご自分のスマホ画面を凝視している。
「──♪」
「……先輩、また彼女さんの写真見てるんですか?」
「そうなんです! あ、見ますかっ?」
「いや見ませんけども」
何が悲しゅうて、他人の恋人(しかも知らん人)の写真を見なくちゃならんのか。
「そうですか……」
「いやそんなしょんぼりしないで下さいよ」
この先輩の情緒がたまに分からない……。
「……先輩って、本当に彼女さんのこと好きですよね」
「もちろん!」
即答、しかも、にっこり満面笑顔付き。
ふと、興味が湧いた。
「具体的に、彼女さんのどんなところが好きなんですか?」
「具体的に……ですか」
ふむ、と先輩が顎に手を添える。目は真剣だ。
私は、恋人はおろか特別に好きな人も居ない。居たこともない。
だから、こんなにも誰かを好きになる理由というか。他人をここまで惹きつけるものは何なのかとか。そのあたりのことが気になったのだ。
「そうですね……まず、笑顔がとんでもなく可愛いところ、でしょうか」
「はあ」
何だ、結局顔か。
「それから」
あ、まだ一応あるのか。
「小柄なところが、キュンと来ます」
やっぱり見た目か。
「そして、その見た目通りの俊敏さ!」
ん?
「思い付いたら即行動に出る決断力も素敵ですし……そもそも、その思い付きも素晴らしいんですよ。ナイスアイディア! といつも感動します。私はどうしても教科書準拠と言いますか、何事もセオリー通りに動きがち・考えがちなので……がんじがらめになりそうなところを打破してくれるのは、ありがたいし、楽しいんです。あとは、ふっといきなり居なくなったり。かと思ったら戻って来たり。そんな神出鬼没で、自由な猫さんみたいなところも、本当に素敵なんですよね。他にも」
「あ、もういいです。大丈夫です」
長い。
思った以上に色々あった。
すごい。
「そうですか?」
「はい、どうも。というか、神出鬼没なところっていいところなんですか?」
褒め言葉で聞くことは少ない気がする。
「そんな自由な人じゃ、心配になりません? そのままどっか行っちゃいそうで」
私の少し意地悪な質問に。
先輩は、ふわりと柔らかな笑みを浮かべた。
「寧ろ、逆です」
「逆?」
「自由なあの人が、必ず私の元に帰ってきてくれる。そのことが、何よりも嬉しくてたまらないんです」
「…………」
何だろう、これは。
甘ったるさに、胸が焼けるこの感覚は。
「ごちそうさまです……」
もう要らない。
「?」
げっそりしている私を見て、先輩は不思議そうに首を傾げた。
END.




