特権行使のしあわせ(百合。真面目×自由人)
クーラーの効いた部屋。ソファーに座って。
タブレットで漫画を読む。
膝の上には、恋人の頭。アイマスクをして、ぐうぐうと健やかに寝息を立てている。
休日の午後。
何か、倖せだなあとしみじみ思う。
「……よく寝てる」
アイマスク越しに、そっと瞼を撫でてみた。それでも起きない。
近ごろ、本当によくがんばってたから。
お疲れ様、と頭も撫でた。
頑張り屋の彼女を、こうして甘やかすのは恋人の私の特権だ。
そう、特権。義務ではない。
常にトップギアで走り続ける彼女が、ふと気を抜ける場所。それが、私の隣。そのことが、こんなにも嬉しい。
……不思議だな。彼女とこうなる前は、私、こんなじゃなかった。
ただ何にも縛られず、好きなところへ行き、好きなように過ごし、そしてまた何処かへ行く。
そんな生き方に憧れたし、そんな風に生きて来たのに。あの檻みたいな学校生活の中でさえ。
だけど、今はちょっと違う。
彼女の隣に帰りたいし、彼女の帰る場所は自分であって欲しい。
私は、彼女の『ほっと出来る場所』で在り続けたい。
「まあ、馨くんが、私を自由にさせてくれてるのもあるんだろうけどねー」
私にとっても彼女は『ほっと出来る場所』なのだ。
倖せで、贅沢なこと。
「さて」
ちょっと足が痺れて来た。これから、どうしようか。
申し訳ないけど、クッションにお役目を譲るか。
それか、おやつの時間まで耐えられたら、そのときに起こして、一緒にお菓子を食べるか。
どれが一番、私も彼女も楽しいだろう。
「悩むな」
私はタブレットを置き、贅沢な悩みに身を任せた。
END.




