虎視眈々と、その席を(男女幼馴染。片想い)
『史兄ちゃん! 見て! セーラー服!』
あ、やばいな。
と思った。
中学の制服が出来上がったのだ、と嬉しそうに見せてくるこいつ……幼馴染の三つ下の妹。ある意味こいつも幼馴染だ……を見て。
グッと腹の奥が熱くなるのを感じたから。
『おー。馬子にも衣裳やな』
『失礼なやっちゃな!』
『へえ、意味を知ってるとは、やるな』
『いやちゃんとは知らんけど。絶対ええ意味やないのはわかる!』
『知らんのかーい』
その場は茶化して乗り切ったが、これはやばかった。
子どもだ、妹だと、ずっと思っていたのに(何せ、家が繁盛している総菜屋で忙しく、俺は幼馴染の家に預けられ、殆どの時間をそこで過ごしていたのだ)。
制服を着た彼女からは、すでに『女性』の片鱗が感じられた。
そしてその部分と、昔から知っている彼女らしさが合わさると、とんでもなく自分の心は揺れ動いてしまう。
可愛くて、ドキドキして、……愛おしい。
慈しむ、という言葉は分からなくても、体感で知っていた。
そこに、ドンッと刺激的な感情が乗っかって来て、しばらくは混乱した。
いやいや気のせいだろう、妹みたいなもんだろう。
そう思って数年は、誤魔化し誤魔化し生きて来た。
想いが起こっては、打ち消し。
うっかりあちらの処理に使っては、罪悪感に打ちのめされ。
そうしてある日。
俺はすっかり、諦めた。
こいつが好きだ。認めよう。
だから。
いつだって眺めることにしたし、周りにライバルが居ないかそれとなく見張ることにした。
もともと近い距離を、更に近付けて。けれど、慎重に。
(必ず、手に入れる)
もとから家族みたいに過ごして来たのだ。
それが、本当にくっついたって構いやしないだろう。
「史兄ちゃん、それ、言うてたお店の新作? 兄ちゃんが考えたっていう」
「そう。まあ、食べや」
「ええやん、美味しそう」
と、にっこり笑うその顔を。
独り占め出来るまできっとあと少し。
そう思って、今日も虎視眈々と彼女の隣を狙っていく。
END.




