彼女が私を可愛いと思う度に撫でていた事実を、このときの私はまだ知らない(幼馴染百合。女子高生。朝子×星音)
夏休み。朝子の部屋で、宿題をする。
……というのは建前で、大半の時間は、一緒に動画を見たり、それぞれ本を読んだり、ダラダラ過ごしていた。
一応、宿題をしている時間もあるにはあるけど(今が辛うじてそう)。
お互い別の好きなゲームや動画視聴をしている時間すらあり、本当に単に一緒に居るだけ、という感じだ。
それが嫌とかではなく、寧ろ楽というか、例年通りというか。
もはや付き合いたてカップルよりも熟年のそれに近いなぁ、と思う。
(このまま一緒に暮らしたりしても変わらないかも)
と想像してみて、勝手に一人で照れた。
……照れる余地(?)があるから、まだまだ熟年カップルでは無いかな。うん。
さっきからちっとも進まない数学を前に、頷いた。
そのとき。
……ぽふ。
「朝子?」
頭に、彼女の手が乗った。そのままその手が、よしよしと私の頭を撫でて来る。
「なに?」
「別に」
朝子は、真顔で……いや、ほんの少し口角を上げ、言った。
「相変わらず撫でやすい頭だな、と思って」
それは、褒め言葉なのか。最近、彼女によく言われる気がするが。
「そりゃどーも」
頭の形を確かめるように撫でる手は、悔しいけど気持ち良かった。
「撫でるの、いつもいきなりだね」
「……予告するものでもないだろ」
「それもそうか」
窓の外では蝉が鳴いている。暑くなるのは、まだまだこれからのようだ。
END.




