どっちも食べよ(百合。真面目×自由人)
「見て下さい、ミイさん! マスカットのジュレです!」
馨くんが、嬉々とした様子で何かの本をこちらへ開いて見せる。
「なにそれ」
「会社の賞で貰ったお取り寄せギフトです」
「ああ、そういえば前に何か言ってたね」
開かれたページには、色とりどりの果物のジュレが並んでいた。
どれも綺麗で美味しそう。眩しい。
「これ、前にミイさんが食べてみたいって言ってた品種のじゃないですか?」
馨くんの指が、美しいマスカットグリーンを指差した。
「あ、そうかも。岡山県のか」
「じゃあこれにしますね!」
「待て待て待て」
ガシッと彼女の肩を掴む。
「馨くんが貰った賞品なんだから、自分の好きなやつにしな~?」
桃とか。岡山の桃、好きでしょ。
放っておくと、自分よりこちらの好みを優先しだすのでいけない。何度か言ってはいるんだけど。疲れてるときが一番危ない。……最近お疲れ気味だもんな。危ない。
「でも美味しそうに食べるミイさんを見たいんです……」
「美味しいものは何でも美味しそうに食べてる自信あるよ」
「それは……その通りですが。いつでも可愛い笑顔ですが」
「なら、自分の一番好きなもんにしな」
ほら、岡山県産桃のジュレもあるじゃん。これにしろこれに。私、桃も好きだし。
「……けど『これ食べたかったんだよね』って笑う顔には別の栄養素があるんです……」
しゅんと馨くんがしょげる。何故そこでしょげる。そして、栄養って何。
まったく。
優しくて手のかかる恋人だこと。変なとこ頭固いというか。いや、嬉しいけどね。でも、折角なら二人で楽しみたいじゃない。
「私だって、馨くんの『これですこれ!』ってときの笑顔が見たいんだけど?」
そう言って、彼女の顔を覗き込む。うぐ、と言い淀む馨くんも、可愛い。
「だからさ、二人でおんなじ顔しよ」
ニヤッと笑い、私はページの隅にある品物を指差した。
「! マスカットと桃のジュレ二点セット」
ふふふ。桃のジュレの横にあったのを私は見逃さなかった。
嘘。一回見逃して、二度目のさっき気が付いた。
「これならどっちも楽しめるじゃん」
「これにします!」
「食べさせ合いっこ、しよーね」
「はい!」
馨くんが、にっこり笑う。その顔を見て、私もにっこり微笑んだ。
END.




