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遠雷、心満たされるとき(百合。恋人とその姪っ子と。三人暮らし)

 居間で。各々が好きなことをしている休日の昼下がり。

 ひと部屋で固まっていると、電気代が安く済む。

 それと、寂しくない。

 まあそれぞれ、本を読んだり、タブレットで動画を見たり、スマホで漫画を読んだり、やっていること自体は本当にバラバラなんだけども。

 この自由さと寂しくなさの共存が、いいんだよね。

 その快適さをしみじみ味わって過ごしていると。

 ゴロゴロゴロ……

 遠くで雷の音がした。

 スマホから顔を上げ、空を見る。

 晴れてはいるけど、さっきよりも雲が増えていた。

 これはひと雨来るかもなぁ。二階の窓、閉めて来ようか。

 そんなことを考えていたら。

 とん、と。

 小さな温もりが私にぶつかって来た。

 そちらを見れば、小牧ちゃんが、私にぴったりと身を寄せている。

 ……そっかそっか。

「雷、近付いて来そうだもんね」

「……うん」

 小牧ちゃんは、そんなに雷が得意ではない。

 小学生だとやっぱり大きな音とか光は怖いよね。

 いや、何歳でも苦手なものは苦手だと思うけど。より一層ってこと。

 彼女は図書室の本を抱え、真剣な顔で耳を澄ませていた。

 音が、徐々に徐々に近付いてきている。

「大丈夫だよ、小牧ちゃん」

 その様子が、本人には悪いが可愛くて。

 ぎゅーっと抱き締めてしまう。

 暑いのにごめんね。でも可愛いんだよ。

「ヤバいのが来たら、私が守るからさ!」

 何か危ないことが起こったとして、私は、何が何でもこの子は絶対に無事に生かすと既に決めている。

 だから、何にも怖くないんだよ。

 それを伝えるためににっこり笑ってみせれば。

「ダメ」

 と言って、彼女は真顔で首を横へ振る。

「え?」

「やばいのが来たら、一緒に逃げるの。みんなで」

 ぎゅ、と小牧ちゃんが私を抱き締め返した。

「ね、櫻子ちゃん」

 そして私越しに、タブレットを見ている櫻子へそう聞く。

「当たり前だろ」

 振り返ると、憮然とした顔で櫻子がこちらを見ていた。

「自然に勝てると思うなよ、阿呆が。やばいのが来たら何はともあれ逃げるんだよ」

 阿呆め、と櫻子はもう一度言うと、そのままタブレットへ視線を戻す。

「ね?」

 腕の中の小牧ちゃんが、静かに、けれど何処か得意げに微笑んだ。

「……そうだね」

 私の心は、その対照的な二つの表情に、ぶわりと温かく満たされた。

 それは嬉しさに飛び跳ねたい気持ちにも似て、

「本当に、そうだ」

 私は更にギュッと強く小牧ちゃんを抱き締めた。


 END.


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