真面目の方向はたまに明後日を向く(百合。真面目×自由人)
リビングにて。馨くんが、スマホと睨めっこしながら真剣に何かを悩んでいた。
「うーん……」
宙を仰ぎながら、難しい顔をしている。
「えらく悩んでるね。何悩んでるの」
「ミイさん」
アイス食う? と言って、吸うタイプのアイスをチラ見せする。二つ一組のアレだ。
彼女の顔がパアアと輝いた。
「この手のアイスを分けて貰えると、やっぱり嬉しいですよね」
「家でも?」
「家でも」
真面目に頷く馨くん。しかし、二人暮らしの家で二つ入りアイスを買ったら、それはもう自動的に分けっこすることになると思うんだけど。そこんところどうなんだろう。
まあ嬉しそうだから良しとするか。
「それにしても、何に悩んでたの?」
アイスを吸い吸い、もう一度聞いてみる。
甘。冷た。サイコー。
「これです」
馨くんがスマホを差し出したので、受け取った。
彼女もまたアイスを吸って、倖せそうにしている。何より。
で、何を悩んでるって? スマホの画面に視線を落とし……ん?
首を傾げる。
「何これ、水着?」
「はい。ミイさんの今年の水着を通販しようと思って迷ってました」
目元をキリッとさせ、彼女が言った。
アイスをちゅーちゅー吸いながら、恰好付けられてもねぇ。
それでもちょっとカッコ可愛く様になってるんだから悔しいよねぇ。
「……去年のあるけど」
多分、一回くらいしか着てないやつ。しかもそれ、家で水浴びしたときにムード出したくて着たとかだった気がする。
「今年のトレンドもまた、ミイさんに似合いそうなんで」
相変わらず真剣に語ってくれるけど、何を言っているのかさっぱりわからない。
水着ってトレンドあるの? マジで?
いや、それより。
「そんなん買ったって、着るとこないでしょうよ」
私、そこまで海とかプールとか興味無いし。
そもそも外だったら上にラッシュガードとか着なきゃだし。
あまり意味が無いのでは?
「家で着て頂いて、私に見せて頂ければ。あ、部屋に露天風呂やプールの付いたお宿を予約するのも手ですね!」
手ですね、じゃないのよ。
どうして馨くんは、たまにおバカになるんだろう。
「……去年買って貰ったやつ、まだまだ着たいから。今年はそれを着るから。買わんで」
いや、何処で着るんだよって話だけど。ナイトプール? どうしよう、今はあんまり興味無いな。
「…………わかりました。ミイさんがそう仰るなら」
「ガチ目に悔しそうな顔するじゃん」
あまりに本気の顔で悔しがるので、少し可哀想になる。手を伸ばし、彼女の頭を撫で撫でしてあげた。
今年は、もう少し水着を着る機会を増やすかなあ。
(……なんて考えちゃうから、私も大概だよな)
自分で自分に苦笑しつつ。
撫でられて満足そうにしている馨くんを見ていると、何でもいいかと思えてしまうのだった。
END.




