彼女とせせらぎ、その効果(百合? ロマンシス? 疲弊気味社会人女性)
彼女に連れられて来た清流、その傍で。
二人並んで、川の流れをぼんやり眺める。
かれこれ……どのくらいだ?
三十分? 一時間? はたまた実は五分しか経っていないのか。
「……」
「……」
何もわからなくなるくらい、私たちは川の流れだけを見ていた。
ぼー……、と。
ザアザア流れる川を見る。
飛沫は白く、川は澄み切り、あちらの方など青くきらきら煌めいている。
木々の濃くも清しい香りが、辺りいっぱいに満ちていた。
ザアアアア──
川が、豊かな水が、どんどん、どんどん流れていく。
(……川の音しか、頭に入って来ん)
流れていく。
全部。
親の声も。職場のひそひそ内緒話も。上手く生きようともがくほど、どうにもならなくなる焦燥感も。
全部、全部。
私の後ろへ、流れていく。
(……このまま)
私自身も、流れてしまえば。そう出来たら、どれだけ。
そんな考えが湧いた瞬間。
……ぎゅ。
彼女の手が、私の手を握り締めた。
ハッとそちらを見ると、彼女が優しく笑ってこちらを見ていた。
「な? なーんもかんも、流れていきようやろ?」
軽やかな口調は、川の流れに溶けることなく、心地好く私の耳へと届いてくれる。
「……うん」
「ふふふっ、だから私、何かあっちゃここに来るんよ。全部流れちゃうからね」
繋いだ手を振り振りして、彼女が言った。
「みこっちゃんにも効果があって、良かったわ~」
少し訛っている彼女の声は、耳にも心にもしっかり馴染む。
そしてこちらを見る優しい眼差しは、私の弱さを許していた。
やっと。
胸のつかえがじんわりと溶け、涙が少し目端に滲んだ。
「……うん」
私は、彼女の手を強く握り返して頷く。
「すっごく効く」
彼女の声と、川のせせらぎと。
今その二つだけが、私の世界の中には在って。
この二つだけで良い、と決めてしまうと、不思議と心が軽くなった。
END.




