高鳴るスタンプ(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済。同棲中)
休日の朝。デートの前。
私はリビングで化粧をしていて。化粧を先に済ませた桐子さんは、テレビ横のチェストから、今日付けるアクセサリーを選んでいる。
決して急いではないけれど、何処かそわそわする空気の中、私は新しい口紅の封を開けた。
付けるならデートの日にと思い、今日まで取っておいたもの。
早速、唇に乗せてみた。が。
「──ぁ」
鏡を見て、あちゃあと眉を下げる。
思っていたより、ずっと色が濃い。
うーん。テスターが無くて、サンプルの色合いだけで買っちゃったけど。失敗だったかも。
「芽瑠ちゃん、どしたの?」
イヤリングを付け終えた桐子さんが、いつの間にか隣に立っていた。
「新しい口紅が、思ってたより濃かったんです」
ティッシュを新しく出しながらそう言えば、彼女も苦笑を浮かべる。
「あらら。たまにあるよね」
すとん、とそのまま座った桐子さんを見て、ふと。
悪戯心が湧いた。
「桐子さん」
名前を呼んで、その肩に手を乗せて。
「芽瑠ちゃ」
──ちゅ。
「……移してみちゃいました」
なんて。
(漫画で見て羨ましくてやってみたけど、思ったより恥ずかしい!)
「す、すみません。これ、ティッシュで」
「……芽瑠ちゃん」
私の上に影が差す。
え、と思う間もなく、唇がまた重なった。
ちゅ、ちゅちゅ、ちゅ。
幾度か、角度を変えて。キスが、降って来る。
「と、桐子さ」
「……あんまり可愛いこと言ってると、襲っちゃうよ?」
なんてね、と笑う桐子さんの瞳が、本気の色を宿している。
私の胸が大きく弾んだ。
「……あの」
「ん? あ、ティッシュで唇、整えようね~。いやコットンの方が良」
「いいですよ」
彼女の目が丸くなる。
「桐子さんになら、いいです。……襲われても」
私が言えば、桐子さんは顔を覆った。
「~~~。もう、この子は」
それから手を外し、口角をキュッと上げる。
「デートから帰ったら、覚えててね?」
眼差しは優しいのに、表情は狩りの前の狩人のようで。
私はドキドキ高鳴る胸を押さえながら、一つしっかり深く頷いた。
END.




