その手を私は好きだと思う(百合。真顔系クール女子×ダイナマイトマッスルボディ高身長女子。高校時代)
朝陽を浴びた、いつもの通学路。
それは、とても爽やかな光景の筈なのだけど。
(あー……んだ、これ?)
私は今、絶賛気持ち悪さの中に居た。
(何か、気持ちわる……胃が重いっつーか、だるいっつーか)
胃の辺りを押さえて何とか歩くも、足が重い。
胃が重いと足まで重くなるの、何なのだろう。
(え、何、今日食べた卵、もしかしてアウトだった? ラスいちだったから、賞味期限も何も見てない。それとも、ヨーグルト? あれは確かに期限切れてたけど)
どれだ。どれが原因かわからない。
いやわかったところで、この気持ち悪さがどうにかなることは無いんだけど。
(だる……どうしよ。かと言って、帰ったところでねー)
『インフルエンザじゃないなら学校へ行け!』
と両親が声を揃えて言う様が目に浮かぶ。
(学校行ったら……保健室直行? や、それよりもトイレ……? でも吐くって程でも無いし……)
何だか頭まで重く感じられてきて、いっそ笑けてきたとき。
「伽羅?」
私を呼ぶ声がした。
「……あ、おおこそ」
声の方を見れば、大社が居る。おはよ、と言った自分の声が、驚くほど生気が無くてまた笑えた。
「どうした、お前」
けれど、大社の顔は無表情のまま。それはいつもか。
「えっと、わかんない」
「わかんない?」
違う、眉が寄せられて、厳しい顔だ。大社が、厳しい顔をしている。
「そんな蒼白い顔して?」
「あ、そんな顔なんだ」
へら、と笑えば、彼女の眉間が大渓谷になった。
「無自覚かよ」
「きもちわるさは、自覚してるよ。なんかね、胃がおもい」
「……他は? 熱っぽいとか。頭が痛いとか」
「そういうのはない、かなぁ? あ、でも、頭はおもい」
大社は腰に手をやると、ハアと大きくため息を吐く。
「……今から私んち帰るよ」
「ええ? 何でぇ?」
「お前んちだと、休ませてもらえんだろ」
彼女の手が私の手を乱暴に取り、そのまま私を引っ張って行く。
「あ、一回しゃがめ」
「えええ? なに……」
「いいから」
大社に言われるまま、しゃがんだ。……何だろう、ちょっと楽。
「──よし。登校中に気分が悪くなり動けなくなったお前を見付けて、我が家で休ませたという既成事実が完成した」
なるほどねー、と思いつつ、もう一度立ち上がるのが億劫になって来た。困る。
「しゃがませといて何だけど、立てる?」
「……もうちょっと待ってくれたら」
「それは待つ」
何なら手伝う、と言い、大社もしゃがんだ。
私の顔を覗き込むと、彼女は険しい目元を僅かに緩ませた。
「今日はうちん家で休め。もろもろ、どうにかしてやるから」
大社の手が、優しく私の頭を撫でる。私は、気持ち悪い中でもしっかりと深くときめいていた。
END.




