表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
147/151

「好きだ」が身体を満たしていく(百合。真面目×自由人。高校時代。付き合いたて)

 放課後の教室。今日の夕焼けは、窓いっぱいに広がって美しい。かおるくんと二人きり。机の上には、好きな画家の画集。恋人と向かい合ってそれを眺めているなんて、かなり贅沢な時間だ。

 そんなことを考えていたら。

「だ、きしめても、いい、ですかっ?」

 馨くんが、いきなりそう切り出してきた。声を震わせて。画集から顔を上げ、彼女を見る。彼女の顔は、当然のように朱かった。

「……めっちゃ声裏返ったね」

 私は、淡々とそう返した。いや驚いてはいるのだけど。驚き過ぎて声に感情を乗せ忘れた、みたいな感じ。

「なーんで、それを言っちゃうんですか!」

 馨くんが、机に突っ伏す。私は、さっと画集をどけた。セーフ。

「ごめんごめん」

 それを後ろの机に移動しつつ、反対の手で馨くんの頭を撫でる。

 ちら、と顔を上げた彼女の頬が緩んでいた。嬉しかったようで、何より。

「ところで、いきなりどうしたの?」

「その、画集を見ているミイさんが綺麗で、その」

「ムラムラしたの?」

「~~~~~~決してムラムラだけでなく!」

 あ、ムラムラもあるのね。

 そこを認めるの、真面目で可愛い。口元に手を当て、笑う。

「……あなたが愛しくて。ギュッとしたくなって」

「したらいいじゃない。私たち、付き合ってるんだし」

 付き合っているということは、恋人同士ということだ。

 ハグは、恋人同士のスキンシップだろう。

「そうですけど。でも、その、今はタイミングじゃないとか、色々あるかも知れないじゃないですか」

「真面目だねぇ」

「だって……あなたのことが、大好きですから」

 目を伏せながら、馨くんが言った。その目元は相変わらず朱い。

 私の胸が、キュンと高く鳴る。

 ヴァイオリンが切なく鳴るような、あんな感じで。

 だから。

「!? ミイさん!?」

 その心の音色のまま、私は目の前の馨くんを抱き締めた。

 温かい。馨くんのシャンプーの香りがする。お日様みたいな……多分柑橘系の、良い香り。

 ……好きだなあ。私、この人が好きだ。

 胸いっぱいに『好きだ』が広がる。

「ふふっ。こっちからハグしちゃったよ」

 机越しだけどね~と照れ隠しに笑いながら、そっと彼女を離したら。

「!」

 逆に腕を優しく掴まれ、立ち上がるよう誘導される。馨くんは、いつの間にか立ち上がっていた。

「ミイさん」

 そのまま引き寄せられ、抱き締められた。

 ギュッと。

 先程のハグよりも、ずっと強い。

「っ」

 温かいよりも、熱い。柔らかいけど、確かな質量。匂いも、先程よりもずっと濃く。

 馨くんを、ゼロ距離で感じている。

 彼女の『好きだ』を浴びるどころか、それに浸っているような感覚に襲われた。

 ふんわりとした『好き』よりも、ずっと迫力あるドキドキがやって来る。胸だけでなく、身体いっぱいにそれが広がる。

「好きです、ミイさん。大好きです」

「……私も」

 すきだよ、と答えた声は、恰好悪いけれど震えていた。

 腕まで震えないよう、ギュッと力を込め抱き締め返す。

 好きだよ、好き。

 負けじと私の『好き』も、伝え返す。


 END.


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ