雷雨の夜に(百合。真面目×自由人)
夢うつつ。温かな感触が、私の耳を包む。
そのまま夢の世界に戻っても良かったけれど、何となく瞼を開けた。
「……かおる、くん?」
「すみません、起こしちゃいましたか?」
すると目の前に、恋人の顔。申し訳無さそうに眉を下げて微笑んでいる。
……耳に触れる温かさは、どうやら彼女の掌らしい。
「……雷、鳴ってる?」
カーテン越しにも分かる、空の閃光。割とすぐに、くぐもった轟音が響く。
「鳴ってます。結構近いらしくて、音が凄くて。私はそれで起きたので」
「だから、守ってくれたんだ」
私が起きちゃわないように。
「はい。……結局、逆効果でしたけど」
ごめんなさい、と謝る馨くんに「なんで謝るの」と笑った。
「轟音で起きるより、こっちの方が全然いい」
めざましとしては、恋人の温もりの方が断然良いに決まってる。
「……ありがとうございます」
馨くんが、小さく笑って言った。でも細められた目が本当に嬉しそうで、こちらまでにっこりしてしまう。
「ねえ、雷が遠くなるまでしりとりしようよ」
「目、覚めちゃいません?」
「じゃあ連想ゲームの逆しよ。眠くなるらしいし」
「ああ、何か言いますね。関係ないことを考えてたら、脳が眠らせてくるっていう」
「やってみよ。私からね。シークワーサー」
「いきなりだな……。胡麻団子」
「カフェオレ」
「映画」
「日本酒」
「……さっきから飲み物言ってません?」
「ほんとだ、難しいねこれ」
結局、くすくす笑ってしまって眠気が飛ぶ。
そのまま起きて、ホットミルクを二人で作った。
美味しいね、今日のは一番ですね、なんてお喋りしつつちまちま飲んで、時折キスする。そうするうちに雷は、遠ざかっていった。
今度は「静かだね」「いや雨音はすごいです」「でも眠くなって来たね」「逆にね」と話しながら、ベッドに戻り平和に寝た。
こんな風なら、雷雨の夜も悪くはない。
END.




