或いはドラマティックな何かの始まり(兄の恋愛未満相談に乗る妹)
一つ前のお話(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/142/)の主人公が、お家帰ってからのお話。
「なあ、男女二人きりで映画に行くんは、やっぱりデートになると思うか?」
「何なん、藪から棒に」
夕飯後。お皿を洗っていたら、兄がいきなりもじもじとそんなことを聞いて来た。
いや、突っ立っとらんと手伝うてぇや。
私が顎をしゃくって水切りカゴを示せば「当番お前やん……」とぼやきながらも、ちゃんと布巾を手に取った。よしよし。
ほんで、なんやっけ。
そうそう。男女二人きりで映画やな。それが、デート判定になるかどうかやな。
「そんなこと無いんちゃう? 友だち同士でも行くやろ」
「せ、せやんなあ」
兄は、うんうんと肯いてお茶碗を拭いていたかと思うと、急にムッとつまらなそうな顔になり、それから焦った顔になり、
「いや、なんでやねん……」
と己にツッコんだ。
「どないしたん、映画にでも誘われたん……?」
兄の百面相にツッコむべきかを悩み、とりあえず、その一歩手前を問うことにした。
「そんなようなところだ」
「ふぅん。同級生さん?」
ラストの皿一枚を水切りカゴに放り込み、仕事完了。
ご褒美に取っておいたポテトチップスの袋を開ける。
早速一枚、ぱりん。
香ばしく、罪深い、油と芋の味。
ああ、汝、ポテチ。ポテトチップスよ。
「いや、バイトの新人」
「ああ、兄ちゃんがスカウトした人」
「押し売りしてきた人っていう方が正しいけどな」
そんなこと言うてたなあ、と思い出しつつ、
「そらまた」
ぱりん、ともう一枚、ポテチを頬張って。
「ロマンティックなこって」
言った。
すると兄が、
「これが……ロマン……」
呆然とした調子で呟いた。
「あるいは、ドラマティック」
「あるいはドラマティック……」
私の言ったことをただ茫洋と繰り返す兄は、控えめに言って面白かった。
兄にも、何がしかの季節が訪れそうである。
END.




