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143/150

或いはドラマティックな何かの始まり(兄の恋愛未満相談に乗る妹)

一つ前のお話(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/142/)の主人公が、お家帰ってからのお話。

「なあ、男女二人きりで映画に行くんは、やっぱりデートになると思うか?」

「何なん、やぶから棒に」

 夕飯後。お皿を洗っていたら、兄がいきなりもじもじとそんなことを聞いて来た。

 いや、突っ立っとらんと手伝てつどうてぇや。

 私が顎をしゃくって水切りカゴを示せば「当番お前やん……」とぼやきながらも、ちゃんと布巾を手に取った。よしよし。

 ほんで、なんやっけ。

 そうそう。男女二人きりで映画やな。それが、デート判定になるかどうかやな。

「そんなこと無いんちゃう? 友だち同士でも行くやろ」

「せ、せやんなあ」

 兄は、うんうんと肯いてお茶碗を拭いていたかと思うと、急にムッとつまらなそうな顔になり、それから焦った顔になり、

「いや、なんでやねん……」

 と己にツッコんだ。

「どないしたん、映画にでも誘われたん……?」

 兄の百面相にツッコむべきかを悩み、とりあえず、その一歩手前を問うことにした。

「そんなようなところだ」

「ふぅん。同級生さん?」

 ラストの皿一枚を水切りカゴに放り込み、仕事完了。

 ご褒美に取っておいたポテトチップスの袋を開ける。

 早速一枚、ぱりん。

 香ばしく、罪深い、油と芋の味。

 ああ、汝、ポテチ。ポテトチップスよ。

「いや、バイトの新人」

「ああ、兄ちゃんがスカウトした人」

「押し売りしてきた人っていう方が正しいけどな」

 そんなこと言うてたなあ、と思い出しつつ、

「そらまた」

 ぱりん、ともう一枚、ポテチを頬張って。

「ロマンティックなこって」

 言った。

 すると兄が、

「これが……ロマン……」

 呆然とした調子で呟いた。

「あるいは、ドラマティック」

「あるいはドラマティック……」

 私の言ったことをただ茫洋と繰り返す兄は、控えめに言って面白かった。

 兄にも、何がしかの季節が訪れそうである。


 END.

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