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檸檬は、まだ爆発しない(面白い男と面白い女。バイト先で第三者からの指摘。男視点)

こちら『一度は言ってみたい、「面白い男」』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/136/)のおもしれぇ男視点。

「そういや、今度デートするんですって?」

 藪から棒とは、このことだ。

 客足の途絶えた午後五時半。カウンターの中で、雑談ついでに同僚から投げられた質問は、爆弾だった。

「……は?」

 奇しくも、俺の手には檸檬があった。……ちゃうやん、せやったら爆弾投げるんは俺の方になるんやんか。

「は? やのうてです」

 同僚は、食器の水気を拭きながら言う。

「瑞樹ちゃんと。聞きましたよ」

 瑞樹ちゃん、というのは、近ごろ入って来た新人の下の名前だ。既に馴染んで、瑞樹ちゃん(下の名前)だの、梅ちゃん(あだ名)だのと客や同僚に呼ばれていた。

 いやそれよりも。あの『おもしれぇ女』をスカウトしたのが俺、ということになっているではないか。

 俺としては、本人からの押し売りはスカウトにカウントするかどうかをまず問いたいところだ。

「誰から」

「本人から」

 俺は、檸檬を輪切りにしつつ、先日交わした約束を思い出す。

 ──せんぱーい、ここに映画のチケットがありまーす。

 ポポンッといつもの手品で出されたチケット。

 ──何や、それ。

 ──友だちから譲ってもらいましたぁ。

 ──友だち、おるんやな。

 ──居ますよぉ、変人ばかりザッと三人。

 ──リアルな数字。

 ──一緒に行きませんかぁ? 先輩、このシリーズ好きだって前仰ってましたよね?

 ──おお、好きやな。行くか。

 ──行きましょ行きましょ~。

「……え、あの約束ってデートの約束なん?」

「違うんです?」

 俺と同僚の視線が、バチッと合う。

 ちょっと呆れた風な、同僚の眼差し。

「……。あれ?」

「ふぅん……?」

 それが、少し面白がる色合いに変わり。

「あれ……?」

 俺は、一人首を捻った。


 END.


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