欲張りな私を愛おしそうに見つめる貴女(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済)
本屋さんにて。
目的の本の横に、ファッション雑誌の歴史について書かれた本が置かれてあった。
それを目にした瞬間、脳裏に卒論のことが浮かぶ。ついで先日のゼミ発表のことが思い出され、そこでのダメ出しの数々も浮かんで来て……うっかり始まった負の連想ゲームに、思わずため息を吐いたときだ。
「芽瑠ちゃん」
桐子さんが私を呼んだ。
何ですか? と隣へ顔を向けたら。
つんっ
「あ」
「眉間に皺、寄ってるよ」
桐子さんの人差し指が、優しく私の眉間をつついた。
「……すみません」
「ううん。ただ、眉間に力入れてると額が凝っちゃうからね」
そのまま、指でくいくいと軽く押される。
……気持ち良い。
もしかして、既に凝ってたのかも。
「ありがとうございます……」
少しとろんとした声になってしまう。桐子さんが、小さく笑った。
「困ったことがあったら言って。手伝えることなら手伝うし。無理なら無理で、別の方法で助けるからさ」
にこっと笑う桐子さんが頼もしくて。
「桐子さん……」
感動と時めきが綯い交ぜになって胸を締め付ける。
彼女に見合うちゃんとした大人……自分の課題は自分でしっかり対処し、他の人にも気を配れる余裕ある人……になりたいと常々思っているのに。
もうその胸に飛び込んで甘えたくなっている。
駄目だなぁ、と凹みつつ。
「桐子さん」
「なぁに」
「情けないんですけど、卒論が煮詰まってて」
「情けなくはないよ。がんばってるから、煮詰まるんだろうし」
ああもう。どうしてこの人は、さらっと欲しい言葉をくれるのだろう。
そして私は、どうして「もっと欲しい」と思ってしまうのだろう。
「ありがとうございます。……それで、あの、あとで、『がんばってるね』って頭を撫でて褒めて貰えたら……」
そんな私の欲張りなおねだりに。
「お安い御用だ。けど」
それだけでいいの? とあなたが更に甘やかすようなことを言うから。
「……ぎゅって、して欲しいです」
私は、もっと欲張りになってしまう。
「もちろん」
欲張りな私を、桐子さんはこれ以上なく嬉しそうに満面の笑みで見つめていた。
END.




