貴女を縛り付けない私で居たい(同棲百合)
こちら『この手が貴女を作っている』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/125/)の清風さんサイドのお話
充希に触れてもらうのが、好きだ。
「……今月も、だいぶ凝ってるな」
温かな手が、私の背に優しく触れる。
揺らして、摩って、時折押して。
私の身体の声を、私以上に聞いて、労わってくれる。
「うーん。動かしてたつもりなんですけどねぇ……」
「腰がかなり固い。ちゃんと一時間に一回立ってたか?」
「……忘れてたかも知れません」
「あと最近また足を組むのが増えてる」
「うっ、確かに」
優しい手が、私の足を取る。脚の筋に触れ、足首の稼働を確認する。
真剣な眼差しが、注がれていて。
(……自分よりも自分を大事に扱ってくれるのは、本当、癖になりますよねぇ)
胸が温かくなる。
それと同時に、頭の片隅で警告音が鳴る。
このままじゃ駄目だと。
駄目になってしまうよ、と。
私はこっそり片頬を上げた。
わかっていますよ、そんなこと。
自分に言い聞かせる。
(だから、月一回にしてるでしょう?)
大事にされることに、慣れ過ぎては駄目だ。
慣れてしまったあと、万が一にも(この表現が出ること自体、すでに危ない気はしている)、彼女と別れることになったら。
きっと私、生きていけなくなる。
それは、本当によろしくない。
「ありがとうございます。来月もお願いします」
「……一緒に暮らしてるんだから、もっと頻繁にしたいが」
「いえいえ。プロにそこまで甘えるのは私の矜持が許しませんから」
冗談めいた口調で、不満そうな彼女をはぐらかす。
貴女無しでは生きていけないなんて。
そんな状態には、なりたくない。充希を縛り付ける自分には、なりたくない。
例え貴女がそれを望んでも。
貴女を愛する私は、それを絶対に避けるのだ。
END.




