貴女は私の可愛いエモノ(百合。人間×吸血鬼)
「献血に行くくらいなら、私に血をくれても良くない?」
目の前の美女が、小首を傾げ言う。
さらりと長い金髪が流れ、美しい首筋が露になる。そこから続く鎖骨も胸元も眩しいまでに白い。そしてちらりと覗く谷間もまた白く妖艶で……。
「いや、何か違いますよ」
私は釘付けになりそうな視線を必死で持ち上げ、毅然とお断りする。
土曜日の昼過ぎ。マンションの共同廊下。ここは健全であるべき場所なのだ。
「それよりお隣さん、吸血鬼なんですよね。こんな真っ昼間から活動してていいんですか」
「日光を直接浴びなかったら、案外平気なの」
それでも胸元がら空きの服は着ない方がいいと思う。眼福だけど。いや、何言ってんだ私。落ち着け。
「女吸血鬼ってイイ男を狙うイメージでした」
「あら。女の子も狙うわよ。特に、美味しそうな女の子が好み♡」
あなたみたいな、と囁く唇の動き、その艶めかしさにぞくりとする。怖気とも、期待とも取れる震え。
「……今日は、とにかくただの献血がしたいので」
「ざーんねん」
私は何とか気合で冷静さを保ち、彼女の横を通り過ぎた。
「また、ね。サナちゃん」
そのとき耳元で囁かれた名前に、私は思わず振り返る。
「どうして名前……」
「ふふふ。さて」
どうしてでしょう、と悪戯に笑う彼女は何処までも美しく。
ああ、次は逃げられない。と、生唾を呑み込んだ。
END.




