気にして欲しいわけじゃない、と思うことがまた(百合。幼馴染同士高校生。朝子×星音)
帰りにたまに寄るたい焼き屋が、期間限定の味を二種類出していた。
かぼちゃ餡とずんだ餡。
……まあ何となく味の予想は出来るか。そう思い、横をちらりと見た。
星音の瞳が、きらきらと輝いている。
味の予想が出来るから買わない、という考えもあれば、予想が出来るからこそ買う、という考えもある。恐らく、彼女は後者だろう。
「食べるか?」
「うん。寄っていい?」
「ん」
どちらを買うか迷う星音に合わせ、私も買うことにした。
星音がかぼちゃ餡で、私がずんだ餡。
受け取ったたい焼きは、いつも通り熱く、指が痛いくらいだった。二人とも、ふうふうと何度も息を吹きかける。
それから、思い切ってひと口。
「ん、かぼちゃ餡美味しい」
星音が、はふはふと息の合間を縫うようにして言った。
「こっちのずんだ餡もなかなかいける。餅が入ってるのがいいな」
私も、予想外の餅を噛みちぎりながら言う。この餅が、いいアクセントになっている。買って良かったかも知れない。豆の旨味が、思いのほか良い。
「いいね、お餅入り」
「ひと口いるか?」
「いいの?」
「ほら」
私が差し出すと、
「ありがと」
何のためらいもなく、彼女はひと口かぶりついた。
「ん、美味しい」
そして、にっこり笑う。
無邪気な顔が愛らしく、胸が一瞬ギュッと掴まれた気がした。
掴まれたのち、じわじわと幸福感が沁みて来る。
それをしみじみ味わいつつ、私は意外に思った。
「……そうか」
付き合い始めてから、星音はちょっとした触れ合いにもよく照れを感じていた。
しかし、こういう……間接キス的なことは気にしないのか。軽く拍子抜けする。
そうして拍子抜けした自分に、あるいは間接キスという浮かれた言葉を思い起こした自分に、腹立たしさと似たものを感じ、我知らず眉が動いた。
「あ、こっちのもいる?」
私の無言の視線を、催促と受け取ったらしい彼女が、笑みを含んだ声でそう提案する。
そんな食い意地の張った目で見ていたわけではない、と思うものの、実際気にはなっていたので、
「じゃあ、ひと口」
その提案には乗った。
差し出されたそれを、こちらも躊躇いなくかぶりついてやる。
舌が、かぼちゃ餡の素朴でこっくりした甘さに喜ぶ。優しい味だ。
「うん、こっちも悪くない」
「良かった」
私の感想に、彼女はまた無邪気に笑った。
……うん。
胸を過ぎる幸福感と、何故か一抹過ぎった悔しさに。
私は、無言でただ彼女の頭を撫でる。
途端染まる頬に、何故か少し溜飲が下がった。
END.




