「誰か、どうか」なんて祈りは(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人(18歳以上)
疲れた、と口にすることすら出来ないほど、疲れてしまう日がたまにある。
(しんどい……)
電車に揺られながら、薄っすらとした吐き気に耐えていた。
身体が重い。
特別に何かしたというわけではないから、きっと疲れたなんて言ったら、笑われる。怒られる。
それは、もっとしんどい。
だから、黙って耐える。
気付かれなくても仕方ない。
こういう日もあるさと。
自分を慰める。
電車の中は、蒸し蒸しとしている。雨の夕方。憂鬱そうな顔をしている人たちの中にも、楽しそうに笑っている人たちは居る。
いいな。
けどもしかしたら、心の内は私と一緒かも。
さっき、友達と一緒に居た私と同じ。
だったらいいな。
いや、よくないか。
私はため息を吐いた。
人の不調を願うのは、よくない。
ううーん、本当に駄目だ。落ちてる。
今日は、さっさと眠ってしまいたい。
……ああ、でも。
もし、許されるなら。
『次はー、……』
降りる駅に着き、人混みと一緒にホームへ吐き出される。人いきれに、気持ち悪くなるも、何とか堪えて改札を目指した。
湿気と汗の混じった匂いにうんざりする。落ち切った気分が、更に底なし沼へ……
「──芽瑠ちゃん!」
落ちる前に、陽が射した。
そう、思った。
「桐子、さん?」
「迎えに来たよ」
改札をくぐり抜けると、そこに居たのは、こっそり願った綺麗な笑顔。
「どうして……」
「ん? メールの様子がちょっと落ちてるなって思ったから」
来ちゃった、と笑う桐子さんを見上げていたら。
「──っ」
「! だ、大丈夫っ?」
ぽろぽろぽろっと涙が勝手に零れた。
「だ、だいじょうぶです、すみません、なんか、安心したら、勝手に……」
「うん。そうだね」
桐子さんが優しく言って、私の肩にそっと手を置く。
「そういう日も、あるよね」
ただただ、柔らかな温度と声に。
「はい……っ」
私は、何かを許されたような気がした。
END.




