通行料はどれだけでも(同棲百合。真面目×自由人)
夜。
夕飯もお風呂も済まし、おのおのソファーで動画を観たり、本を読んだりして寛いでいた。
ふと喉の渇きを覚え、キッチンへ飲み物を取りに行こうと立ち上がったところ。
「? ミイさん?」
隣に座っていたミイさんも、おもむろに立ち上がった。
そして。
「ここを通るには、通行料がかかりまーす」
と言って、真顔で両腕を広げた。
「払いまーす」
私はその言葉に素直に従い、彼女を抱き締める。
どんな加減がいいかわからなかったので、とりあえずふわりと優しく。
けれど、抱き締め返して来たミイさんの力は、思いのほか強かった。私は軽く目を瞠りつつ、同じくらいの力を込め直した。
ぎゅっと二人の身体が密着する。
柔らかく、温かい。鼻先に触れる髪からは、同じシャンプーの香りがした。今は、シトラスの爽やかで甘酸っぱい香り。
「……何かありましたか?」
私の問いに、
「んーん」
ミイさんが否定を返す。その声には、震えも嘘っぽさも見当たらない。
だから、本当に言葉通りの気まぐれなのか、それとも実は何かあって隠しているのか、私にはわからなかった。
でも、それでも構わなかった。
「そうですか」
どちらにせよ、彼女が今、私を求めている。それだけは確かだから。
「まだまだ要ります?」
「うん、あともうちょっと」
「わかりました」
ミイさんの満足いくまで抱き締める。
そんな役得をしっかりと享受するのだ。
END.




