君の可愛さは、君以上にきっと私が知っている(同棲百合。写真家と恋人)
恋人が、大口を開け、アイスバーを食べようとしている。
その瞬間を狙って、
パシャッ
シャッターを切った。
「あ?」
「……よし」
お風呂上りで、手元にスマホしか無かったのは惜しい。でも、いい写真が撮れた。
満足。
「いや、よし、じゃねーのよ。何でお前はいっつも変なシーンを撮るんだよ」
だが、恋人はご不満らしい。アイスバーをかじりながら、半目でこちらを睨んで来る。
そんな顔も可愛い。が、流石に撮らない。
ここで撮ったら怒られるのは、学習済だ。
「別に、変じゃないでしょ」
「もっと可愛くキメてる瞬間を撮ってって」
「ええ? やだよ」
「何で」
「ピヨはさ、抜けた顔がいいんだって」
「おい、抜けたって言ってんじゃん」
バキッとアイスバーを半分近く齧り取って、彼女が言う。
ソーダ色が涼しげだ。
見ていたら、自分も食べたくなった。
「否定したのは、『変』だよ。抜けは変じゃない」
踵を返し、冷蔵庫へ。
「変顔になってるかもだろー」
「それは否定しないけど」
「ほら!」
冷凍庫を漁る背中に、ぽこんと何か当たる。振り向いて見れば、私が脱いでほったらかした靴下だった。彼女が拾って丸めて投げたらしい。これは反省。
「いいの。ピヨは、意識して無ければ無いほど、可愛いんだから」
「ホンット、そこ崩さないよねぇ」
「まあ一番無防備な写真は、流石に外には出さないけどね」
「……変なの、撮ってないだろうな」
「だから変なのは撮って無いって」
同じアイスバーの違う味を選び、彼女の隣へ向かう。
「あ、その味ラスイチじゃなかった? ひと口ちょーだい」
「いいよ」
「やった!」
先程までのご不満は何処へやら。にっこりご機嫌、満面の笑み。
彼女の表情は、本当にくるくるよく変わる。
「どした? 何かめっちゃ笑顔だけど」
今度は不思議そうな顔で、こちらを見ている。
「別に」
見ていて飽きない。一等大事な、私の被写体。
END.




