27 花束みたいなフルーツを
玄関の扉が開く音がして、裕一郎は出迎えに顔を出した。
玄関には奈々と、あおちゃんがいた。
あおちゃんは見たことがないほど落ち込んだ表情を浮かべて、大きなリュックを抱きしめながら頭を下げる。
「……裕一郎くん、今日からしばらくよろしくお願いします」
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星野が現場で負傷したらしい。
そんな話が奈々のスマートフォンに飛んできたと聞いたのが、おとといのことだ。
「裕一郎、しばらくあおちゃんを預かっていいですか?」
「預かるって……ここでか?」
今、ふたりがいるのは裕一郎の家だった。裕一郎はキッチンで炭酸水の入ったグラスを手にしたまま、ぐるりと部屋を見渡す。
キッチンは対面式で小さめのカウンターがあり、その先のダイニングには来客用にファミリータイプのテーブルセットを置いている。さらに奥にはリビングが広がっており、大型液晶テレビとローテーブル、裕一郎も横になれるソファがあって、そこに奈々も腰掛けていた。
ベッドルームはふたつ。かつて奈々が使っていた部屋は今はゲストルームに戻っていた。
子どもひとり、数日預かるくらいは問題ないだろう。
「……だが、学校は遠くなるだろ? お前の、あの古マンションじゃダメなのか?」
「あの部屋で3人は厳しいと思いますよ? 裕一郎、無駄に体大きいですし」
奈々がさらりとそう言うので、面を食らった。
……自分が一緒にいるのは、確定事項らしい。
胸にじんわりと込み上げるものを感じながら、表情は冷静を装った。若い恋人に浮かれる中年男のだらしない顔は見るに堪えない、と考えたからだ。
「……じゃあ、俺か、お前が送り迎えするか」
「そうですね。まぁ、そのあたりは後で星野さんとあおちゃんと相談しましょう」
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そういう経緯で、あおちゃんがやって来たのだった。
裕一郎があおちゃんにゲストルームを案内すると、テンションが上がったらしく目を大きく見開いた。
「ホ、ホテルみたいです……! おっきい! きれい! ここ、あおちゃんが使っていいんですか⁈」
「いいぞ。ここにいる間は好きに使うといい」
「わぁい!」
あおちゃんは興奮したように部屋のクローゼットや引き出しを開けて回る。
だが、一巡した辺りで入り口のドアに立っている奈々を見上げた。
「……それで、星野さんのお見舞いにはいつごろ行けるんでしょうか……?」
その声はずいぶんさみしそうに聞こえて、奈々も眉を下げた。
「明日か明後日には行けると思いますよ。今は検査と事情聴取で、病室は関係者以外立ち入り禁止らしいです」
「そうですか……」
「ただの怪我で、命に関わる状態じゃないと聞いています」
「でも、入院してます……」
「そうですね。心配ですよね……」
奈々は困ったように眉を下げて、裕一郎へ視線を向けた。助けろ、ということらしい。奈々は本来、子どもの相手が得意ではないと裕一郎は知っている。
それに、あおちゃんは親族を亡くしていると聞いていた。だから身内の怪我や病気には過敏に反応してしまうのだろう。
裕一郎はあおちゃんに近づいて、床に膝を着いた。
「星野は強い男だ。心配ない。それに、星野だって今ごろあおちゃんが元気でやってるか気にしてる」
「……そうです……?」
「ああ。アイツはいつも、お前のことを考えてるよ」
そう言ったら、あおちゃんはうれしいような、困ったような、子どもにしては複雑な表情を浮かべた。
「……早くお見舞いに行って、あおちゃんは大丈夫ですって言いたいです」
「ん? そんなことを言いたいのか?」
「え?」
顔を上げるあおちゃんに、裕一郎はあえて大きな笑みを浮かべて見せた。
「『全然大丈夫じゃない。さみしいから、毎日お見舞いしたい』って言っていいんだぞ」
そう言ったら、あおちゃんは、泣いた。
「うゔ〜〜……」
「なにしてるんですか、裕一郎! あおちゃんを泣かすとか絶縁モノですよ⁈」
「お前、今の流れはもらい泣きしてもいいところだろうが……」
デリカシーのかけらもない奈々に呆れていると、あおちゃんはすぐに涙を手の甲でぬぐって笑顔を見せた。
「……へへ。あおちゃん、星野さんに毎日会いたいので、『大丈夫』じゃなくて『毎日お見舞いします』って言いますね!」
「ああ。星野だって、そっちの方が安心するだろ。身内が自分と離れてる時になにしてたかは、案外気になるもんだ」
「えらく知ったコトを言いますね?」
俺はお前のコトを言ってんだよ。
裕一郎は心の中だけで反論して、呆れた視線で整った白い顔を眺めた。
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二日経って、ようやく星野に面会許可が出た。
裕一郎は車を出して、学校が終わったあおちゃんと奈々を連れ、星野の病室を訪ねる。
院内を歩いている途中、見知った議員とすれ違った。おそらくだが、星野の今回の怪我の関係者だろう。裕一郎はまた星野の内情を知ってしまった、と苦く思う。公にしていい職業でもないだろうに。
あおちゃんは限りなく走っているスピードで院内の廊下を歩いて、奈々と裕一郎を先導する。よっぽど星野に会いたいのだろう。
受付で案内された星野の病室は個室で、あおちゃんが力いっぱい引き戸を滑らせる。
「ほしのさあああああぁぁぁぁあん!」
「うっせえ! 病院では静かにしろ!」
間髪入れずに怒鳴り声が響いた。その声がいつも通りだったからか、あおちゃんは跳びはねて星野の胸に飛びついた。
「わあああああぁぁぁん! 星野さんお元気ですかあおちゃんは元気なので毎日来てもいいですかーーーーーッ??????」
「うるっせぇ! マジで静かにしろよそさまに迷惑だろうが!」
星野は叱りながら、それでも跳びついたあおちゃんをしっかりと抱き留める。あおちゃんは堪えていた涙が決壊したらしく、早くも顔を涙でぐちゃぐちゃにしていた。
「うゔ、ほじのざぁん……早く帰っでぎでぇ……!」
「……そんな長くはいねぇよ。ただの骨折だ」
星野の左足は、ギプスされた状態で吊るされていた。なんでも、業務中の不可抗力で負傷したそうだ。まあ、生傷の絶えないしごとだろうことは裕一郎にも想像がついた。
星野は健康だからこそ待遇に不満気で、軽くため息を吐き出す。
「ガキとふたり暮らしだって言ったら、転倒する可能性がある内は入院だって言われたんだよ」
「じゃああおちゃんも病院に泊まるべきだったのでは⁈」
「……親族以外は泊まれないんだと」
「…………」
あおちゃんはそれきり黙り込んで、広い額を星野の胸元にこすりつけた。星野もあおちゃんをそのままにして、こちらへ視線を向ける。
「すまなかったな。コイツを預かってくれて、助かった」
「いえいえ。あおちゃん、お利口にしてますよ」
「ああ。なにも問題ない」
本当に、あおちゃんは手がかからない子どもだった。宿題はある程度りえや美恵とやってから帰ってくるし、遊ぶ相手と行き先も逐一メールで知らせてくる。ついでにりえの家のガードマンからも連絡があるので、あおちゃんの状況はつねに把握できた。
奈々の幼少期を知っている裕一郎としては、どうにも比較してしまう。アイツがこのくらいの歳のころは、もっと偏屈でこまっしゃくれたガキだった。友だちはひとりもおらず、裕一郎にべったりで、そのくせ生意気な口を叩くのである。親と縁がないのは同じのはずなのに、なぜこうも違うのか。
だが、星野はこちらの発言を疑わしそうに聞いて、胸元の大きな頭を眺めた。星野にとっては手のかかる子なのだろう。それが、星野が未婚で子どもと縁のない生活を送ってきたからか、あおちゃんが星野にはわがままを言っているのか。あるいは両方かもしれない。
「それにしても、星野さんは人望があるんですね。お見舞いの品がずいぶんありますよ」
奈々の雑談に、星野は顔を上げて薄く笑った。
「同僚に後輩、上司に取引先、あとはまあ、プライベートなつながりか。どこから聞きつけてきやがったんだかな」
「む! お酒のあるお姉さんのお店からですね⁈」
泣いていたあおちゃんがさっとまなじりをつり上げた。
「ちゃんとお付き合いしてる方ならともかく! お酒のお店のお姉さんはあおちゃんが許しませんよ!」
「お前は俺の母親か? ただの営業だ。ほら、お前も食っていいぞ」
星野が視線を向けたのは、カゴに入ったフルーツの盛り合わせだ。
「むう、果物に罪はないですね……じゃありんごで!」
「もってけ。俺は取ってやれねえ」
星野はギプスのはまった左足を指先で叩いてみせた。
あおちゃんは星野と離れるのが嫌らしく、ベッドから動く気配はない。珍しく奈々が笑ってあおちゃんにりんごを取ってきてやった。
ふん。まだまだだな。
「貸せ。ナイフあるか?」
あおちゃんからりんごを、奈々からフルーツナイフを取り上げて、さっと果肉に切れ込みを入れる。
「あ! うさぎさんです! 裕一郎くん、器用ですねぇ」
「裕一郎は図体は偉そうですが、こういうちまちましたことが昔から得意なんですよ」
「やかましい。うさぎだけじゃないぞ?」
裕一郎はうさぎりんごを奈々の差し出した紙皿に置いて、新しいりんごを手に取った。
八等分に切ったりんごの皮に、V字に切れ込みを入れる。それを何度も繰り返して紙皿に並べて、最後にV字に切り分けられた部分をわずかに上下にずらす。あおちゃんが目を見開いた。
「わあ! パフェとかに乗ってるきれいな飾りのやつです!」
「へえ、上手いもんだ」
「飾り切りだ。料理は見た目がいいと、さらに旨く感じるからな」
裕一郎の説明に、あおちゃんと星野は感心して何度もうなずいている。奈々はなにやら呆れた表情を浮かべていた。
「裕一郎の趣味ですよ。最終的に咀嚼するのに、変わった部分に努力を注いでます」
「お前は本当にデリカシーってのがないな?」
「あおちゃんは裕一郎くんに賛成です! おいしそうな見た目だと、いつもよりおいしい気がします!」
「そうだろう?」
「これ、あおちゃんにもできますか?」
「うさぎりんごくらいなら、できるんじゃないか?」
ちらりと星野の様子を確認するが、特になにも言ってこない。
「じゃあ、うちにいる間は裕一郎に包丁の使い方を教えてもらいましょうか。私より裕一郎の方が器用ですからね」
「わぁ! 裕一郎くん、よろしくお願いします!」
あおちゃんはうれしそうに、大きな頭を深く下げた。
山のようにフルーツを持ち帰って来て、あおちゃんはやる気満々でキッチンに立った。だが、星野の家と違ってハイカウンターのキッチンは、あおちゃんの身長だと作業台まで手が届かない。
裕一郎は笑ってあおちゃんをリビングのソファに座らせ、りんごとオレンジ、ペティナイフを運んできてやった。
「お前も一緒に見てるか?」
「私はお夕飯の準備してます。あおちゃんは裕一郎に任せますね」
奈々が機嫌良さそうな笑みを浮かべて、キッチンに入っていく。
この子が来てから、ずっと奈々の機嫌が良い。やはりあおちゃんのことを相当気に入っているのだろう。子どもは苦手なくせに、ずいぶんと楽しそうだ。
「裕一郎くん、それで、うさぎさんりんごはどうやるんですか?」
「じゃあ、ゆっくりやるから見ておけよ」
八等分に切ったりんごの先端に、V字に切れ込みを入れる。それからV字を入れた側の先端に刃を入れて三分の一ほど皮と実を切り離す。V字の内側の部分の皮が落ちて、皮にうさぎのような耳ができた。
「わあ〜! きれい! 裕一郎くんすごい!」
「そうだろう? 俺はすごい」
「星野さんとおんなじくらい指も手も太くて大きいのに、細かく動くんですねえ。星野さんは見た目通り、指の動きは鈍いです」
「まあ、あんまり器用なイメージはないな」
引き金しか引いたことがありません、といった見た目をしている男だ。育児や料理をしている方が意外である。
「だから、あおちゃんがお料理上手になれば、星野さんが大助かりすると思うんですよね」
「なんだ、そんな理由で奈々から料理習ってたのか?」
「もちろん、星野さんといっしょにおいしいご飯を食べるのが一番の目的です! その第一歩が包丁の練習なんですよ」
「そうか。飾り切りは必ず必要なもんじゃないが、包丁に慣れるにはいい訓練になるだろ。それに、こういうのはりんごだけじゃなくて、ほかのフルーツでもある」
「なんと……! ぜひ教えてください!」
あおちゃんが意欲的なので、こちらとしても教え甲斐があるというものだ。怪我だけはさせないように、刃物の取り扱いは厳しく指導する。
うさぎりんごだけでなく、オレンジの飾り切りも披露してあおちゃんから拍手喝采を受けていると、
「そろそろお夕飯できますよ。切ったフルーツはデザートにしましょうね」
奈々から声がかかって、あおちゃんがわぁい、と声を上げて切ったフルーツをテーブルへ置きに行った。
「……なに笑ってんだよ」
「ふふ。それは、裕一郎があんまり父親面してるのが面白くてですよ」
「は?」
別に父親面などしていない。それは星野に失礼というものだろう。
「なら、お前は母親面か? 張り切ってカレーなんぞつくりやがって」
今部屋にただよっている匂いだけで、今晩の献立がわかった。
奈々も裕一郎も、カレーは家で食べない。外食する方が多いメニューだ。それでも一時、裕一郎がカレーづくりにハマっていたことがあって、香辛料だけは残っていた。それを使ったのだろうが、裕一郎がつくるのよりも、ずっと甘くてまろやかな香りが部屋に広がっている。あおちゃんのために、はちみつでも入れたのだろう。りんごも山ほどある。
「あおちゃんにはお腹いっぱい食べてほしいですからね。でないと星野さんが草葉の陰から化けて出てきます」
「星野は生きてるぞ」
「生きててくれないと困ります。私は星野さんの代わりになんてなれませんからね」
そう言って、次にこちらを見上げてきた。長いまつげに縁取られた瞳が、やさしくすがめられる。
「──でも、裕一郎は昔から面倒見が良かったですし、いい父親になれそうです」
奈々が笑って、それからあおちゃんに呼ばれてダイニングへ向かった。
「……………………」
いや。あの女のことだから、深い意味などないに違いない。わかっている。
わかっているが、意識してしまう己は許されるべきだと思う。
星野の退院予定日前日。裕一郎と奈々があおちゃんを預かって、一週間が過ぎていた。
裕一郎は学校終わりのあおちゃんを連れて、奈々と病院へ向かう。裕一郎の運転する車の後部座席で、あおちゃんは奈々から小さな保冷ボックスを受け取った。そこに、あおちゃんの練習の成果が納まっている。
「星野さん、喜んでくれますかね……?」
「もちろんです! あおちゃん、本当に包丁の扱いが上手になりましたよ」
奈々が断言するのに、裕一郎もうなずく。自分が星野だったら、あおちゃんの成長ぶりに夜こっそり泣くだろう。
あおちゃんは誇らしげに笑って、保冷ボックスを宝物みたいにぎゅっと抱きしめた。
病室の扉を開くと、星野はベッドの上で文庫本に目を通しているところだった。意外だ。コイツ本なんか読むのか。
「星野さん! お見舞いに来ましたよ!」
「おう。それ、練習の成果か?」
「はい!」
星野は子どもを相手にするにしてはいささか格好良すぎる笑みを浮かべて、ベッドに近づいたあおちゃんの手から保冷ボックスを取り上げた。
保冷ボックスには、フルーツの詰まったタッパーが保冷剤とともに入れられている。
容器を開けると、りんごとオレンジの飾り切りが規則性を持って並んでいた。
ホテルのカフェで出てくるフルーツ盛りをイメージしている。花束のようで見た目も華やかだ。切り口は歪だし移動時間で多少乾いてしまったところはあるが、十分おいしそうに見える。
星野はじっくりと眺めてから、満足そうにうなずいた。
「きれいなもんだな。喫茶店のマスターに見せたら、バイトしないかって誘われるんじゃねえか?」
「ふふー。それもいいかもしれませんけど、まずは星野さんに食べてもらわないと!」
あおちゃんはすっかり馴染んだ病室からフォークを取り出して星野に手渡す。
星野はうさぎりんごにフォークを突き刺して、ゆっくり咀嚼した。
「……星野さん、おいしいです?」
「ああ」
「やったー!」
万歳をしたあおちゃんの手を、星野が軽く握る。
「やっぱり、怪我してんな」
「あ。その……最初は難しくて、勢い余って……」
「すまん、俺も注意して見てたんだがな」
素直に謝罪する裕一郎に、星野は肩をすくめてみせた。
「子どもなんざいくら注意して見てたって怪我するもんだ。気にするな」
星野は裕一郎にそう言って、あおちゃんの指先を見つめた。
「……ちゃんと包丁の練習したのは、学校の調理実習以外じゃはじめてだったろ? どうだった?」
「難しかったですけど、楽しかったです! それに、お料理ができるとちょっとお姉さんになった気になります!」
「そうか」
「裕一郎くんも、おしごと忙しいのに、いっぱい練習にお付き合いしてくれました! 奈々ちゃんのご飯はおいしくて、お部屋もホテルみたいにきらきらでした! また遊びに行きたいです!」
「…………そうか」
星野は切れ長の瞳にやさしい色を浮かべて、一度うなずいた。まだ星野とは付き合いが浅いが、珍しい顔だな、と思った。
「……じゃ、傷はそこのナースステーションで消毒してもらってこい」
「ええ? ちゃんと絆創膏貼ってますよ?」
「せっかく病院来たんだ。プロに見てもらえ」
星野はそう言って、奈々に目配せした。奈々はあおちゃんの肩を引いて、病室から連れ出す。
「傷を見てもらったら、星野さんにお茶を持って行ってあげましょう」
「は! そうですね! フルーツばっかりだと喉乾いちゃいますね! 星野さんはコーヒーが好きです」
「病院でカフェインは許可されてないかもしれませんね。それも看護師さんに訊いておきましょう」
賑やかな声が去っていく。ふたりの気配が十分遠かるのを待ってから、星野を見た。
「……なんだ? 人払いなんざして。お前の職業なら誰にも言ってないぞ」
裕一郎から切り出すと、星野は薄く笑った。
「そんなコトじゃねえよ。……アイツは、一週間どうだった?」
「どうって……楽しそうにしてたぞ? もちろん、お前の心配はしてたが、お前にこのフルーツの花束を渡すんだって、目標ができてからは気が紛れたみたいだ」
「そうか」
星野はそう言って、少しの間口を閉じた。
鋭いまなざしはやけに真剣に見えて、裕一郎も身構えてしまいそうになる。とは言え、この流れでそんなに重たい話題が出てくるとも──
「……アンタ、アイツを引き取る気、あるか?」
「…………は?」
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