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第九章 妹の復讐

ある日、奈良県警から捜査協力の依頼があった。

奈良県警捜査一課の折田浩一主任刑事から、「凶悪な殺人犯、西垣勉が近鉄奈良駅から京都行き急行に乗車した事を防犯カメラで確認しました。顔写真をファックスしますので、犯人確保に協力願います。なお犯人は三人も殺害している凶悪犯なので、一般市民が被害に遭わないように警戒して下さい。」と捜査協力の要請が一課長にあった。

一課長から指示を受けた緒方係長から説明を聞いた刑事達は、「そんな凶悪犯が京都に来たのか!」と焦っていた。

広美は、「京都駅の防犯カメラをチェックして、西垣の足取りを追って下さい。」と刑事全員に指示した。

数時間後西田刑事から、「京都駅から地下鉄で国際会館行きに乗車した事が防犯カメラで確認できました。手分けして、どの駅で降りたのか確認します。」と連絡があった。

その後須藤刑事から、「四条駅で下車した事を防犯カメラで確認しました。」と報告があった。

広美は警官隊を四条駅付近に向かわせて警戒していた。

全捜査員を四条駅に向かわせて聞き込みの指示をしたが西垣の足取りは掴めなかった。

数日間、西垣の行方が掴めない中、広美は花町で鶴千代として料亭などで聞き込みをしながらお座敷にでていた。

    **********

そんな中、広美がお座敷にでるとお客様が殺害されていた。

広美は三係ではなく緒方係長に連絡した。

「鶴千代が第一発見者なので、私は風邪だとでも伝えておいて下さい。それと私が料亭に入る時に、奈良県警から捜査協力のあった凶悪犯に酷似した男性とすれ違いました。防犯カメラのチェックをお願いします。」と依頼した。

「凶悪犯とすれ違っておきながら見逃すとは君にしては珍しいミスですね。」と何かあったのかと心配していた。

「誰か襲われている可能性があり、人命を優先しました。話し声など物音がしなくて、明かりの点いているお座敷を捜して死体を発見しました。」と被害者が生存していれば人命優先したと告げた。

「わかりました。前田刑事がお見舞いに行くと厄介なので、林主任はすでに捜査を開始している事にします。前田刑事に第一発見者の鶴千代さんから事情を聞くように指示しますので、現場の状況を説明してやって下さい。」と提案した。

広美は、「お気使い、ありがとうございます。それでは私は現場で鶴千代として待機しています。」とその提案を受け入れた。

やがて刑事達が到着して、前田刑事は広美に警察手帳を提示し、「京都府警の前田です。鶴千代さんが第一発見者だと聞いて驚いています。この近くに凶悪犯が潜んでいる可能性があります。遺体を発見した時の状況を説明して下さい。それと、怪しい人物に気付きませんでしたか?」と質問した。

広美は、聞き方が歪ね。私と被害者の関係を何故聞かないのかしら?と不満そうに、「被害者は、うちの置屋のお客様の加地洋一郎様です。芸者遊びなので本名かどうかは不明です。そこはあなた方で調べて下さい。今日はお座敷に呼ばれていました。私が到着するとこの状態でしたので林主任に連絡すると、近くにいたらしく、すぐに来てくれて既に死亡されていると判断されて、救急車は呼ばずに警察に通報してくれました。林主任の説明では、被害者の加地さんは、金融業と言っても実態はやくざらしいですね。怪しいお客様は、私が林主任と昵懇の間柄なので、いつも私がお相手させて頂いています。それと怪しい人物ですが、私がこの料亭に入る時に、ハンチング帽にサングラスとマスクの男とすれ違いました。林主任から、奈良県から逃亡してきた凶悪犯だと見せられた写真の男性と、顔の輪郭が似ていました。」と説明した。

前田刑事は、「解りました。取り敢えず別室で待機していて下さい。」と指示した。

    **********

広美は別室から緒方係長に電話して、「防犯カメラのチェック結果はどうでしたか?」と確認して、前田刑事に電話した。

「私が鶴千代に確認しました。鶴千代がすれ違った男は、奈良県警から捜査協力のあった凶悪犯に酷似していたそうです。近くを捜しましたが発見できませんでした。防犯カメラをチェックすると、その男は八坂神社方面に向かっている事が確認できましたが、八坂神社の防犯カメラでは確認できませんでした。バスかタクシーを使用した可能性があります。至急捜して下さい。」と指示した。

前田刑事は他の刑事達に説明して八坂神社に向かった。

前田刑事が、「付近で聞き込みしましたが、西垣の目撃情報はありませんでした。」と報告した。

広美は、「先ほど鶴千代に別室で待機するように指示したでしょう?いつまで待たせるのかと怒っていたわよ。何で私が怒られなければならないのよ!」と伝えると前田刑事は慌てて料亭に戻った。

前田刑事は、「申し訳ございませんでした。今日のところはお帰り頂いて結構です。このような事は主任ではなく、私に直接連絡して下さい。」と不満そうでした。

広美は、「私は前田刑事さんの携帯番号を知りませんので、主任さんにいつもこんなに待たせているのかと確認しただけですよ。捜査方針は主任に聞いたほうがいいでしょう?」とまあ、謝っていたので許してあげるかと思っていた。

    **********

翌日広美は、「凶悪犯は最初から、誰を殺すのか決めて行動しているようです。昨夜あれだけ捜しても発見できなかったのは、次の目標に移動した可能性があります。至急奈良県警に問い合わせて、昨日の被害者との共通点を捜して下さい。凶悪犯は、また京都で殺人を繰り返すのか、他府県に移動して殺すのか不明です。まだ京都にいれば、何としても殺人を犯す前に逮捕して下さい。」と指示した。

前田刑事が、「奈良県警に問い合わせましたが、奈良県で殺害された三人は、出身地も仕事も大学も別で、関連性が不明らしいです。」と報告した。

広美は、「前田!何度も言わせないで!出身地を聞いて、出生から直接調べて来て!何か共通点が必ずあるはずよ。」と指示した。

須藤刑事がその様子を見て、「昨日、主任を怒らせるからちょっとした事でも怒られるんだ。」と笑っていた。

    **********

数日後、須藤刑事が、「奈良県で殺害された三人と、先日京都で殺害された人物は、通っていた大学は異なりますが、四条河原町のゲームセンターに同一時期に入り浸っていました。ゲームセンター仲間はもう一人いたそうですが詳細不明です。」と報告した。

広美は、「その人物が事件に関与している可能性が高いわ。至急特定して下さい。」と指示した。

前田刑事が、四条河原町のゲームセンターで聞き込みして、当時勤務していた社員を聞き出して、当時の事を聞く為にその元社員を尋ねた。

その社員の説明では、ゲームセンターでのもう一人の仲間は津田吾一で、当時は京都府立医大の医学生だと判明した。

府立医大に問い合わせると、現在九条病院に勤務していると判明して、九条病院に向かうと今日は夜勤明けで帰ったとの事でした。

「自宅を確認しましたので、これから向かいます。」と広美に報告して向かった。

その後、初美から電話があり、今晩九条病院の津田先生からお座敷がかかったと依頼されて、広美は津田吾一と聞いて引き受けた。

    **********

やがて前田刑事から連絡があり、「津田吾一の自宅に向かいましたが、寝ているのか応答がありませんでした。明日も出勤らしいので朝一番に病院を訪ねます。」と報告した。

広美は前田刑事から報告を受けて、「殺人鬼は京都にいるのよ。のんきね。今晩殺害されたらどうするのよ。今晩鶴千代が九条病院の津田先生のお座敷に出ます。鶴千代には私から説明しておくので今晩護衛して下さい。他の刑事にも向かわせるので、殺人は何としても阻止して下さい。」と指示した。

前田刑事は、「了解!」と張り切っていたので心配になり、「念の為に伝えておきますが、護衛するのは鶴千代ではなく九条病院の津田先生だって解っているわよね。」と念を押した。

広美は前田刑事を前面に押し出して、他の刑事達を遠巻きに配置した。

    **********

しばらくすると須藤刑事が、「西垣発見!」と無線で連絡した。

広美は、お座敷で咳がでた芝居をして津田と離れて袖口で口元を隠して、「全員で取り囲んで職質かけて下さい。」と指示した。

西垣は前田刑事を突き飛ばして、人質を取ろうとして刃物を懐からだして料亭に逃げ込んだ。

刃物を所持した男が料亭に飛び込んできたので芸者や料亭の仲居が悲鳴を挙げて逃げ惑う中、西垣は刃物を振り回して、「津田を出せ!」と要求した。

広美がお座敷から、「何かあったの?」と全員で取り囲んで何故取り押さえられないのよと不満そうに出てきた。

西垣は芸者姿の広美を人質にしようとして襲おうとしていた。

前田刑事が、「鶴千代さん、危ない!」と叫んだ瞬間、広美は身をかわして足を出すと、西垣は足を取られて転倒した。

そこを須藤刑事と西田刑事が西垣を取り押さえた。

前田刑事が、「鶴千代さん、今の身のかわし方は格闘技の経験があるのですか?」と信じられない様子でした。

広美は、「今のは踊りのステップですよ。」と笑顔で誤魔化した。

    **********

西垣を連行して動機を問いただした。

西垣は、「俺の妹が四条河原町を歩いていると、ゲームセンターからあいつらが出てきてゲームセンターに連れ込まれてトイレで輪姦されて写真と動画撮影されてSNSにアップされた。妹はそれを苦にして自殺した。SNSにアップされた動画と目撃者との話から身元を確認して全員殺す事にした。」と自供した。

広美は、「あなたが集めた証拠を提示して下さい。私達で確認して津田は必ず逮捕します。」と約束した。

その後、広美は殺人罪で服役している西垣に面会に行き、津田を逮捕した事を伝えた。

「裁判はこれからありますが、私達は、あなたが集めた証拠を刑事として確認しただけです。担当検事から依頼があれば、津田を有罪にする為にも裁判に出廷して証言して下さい。」と依頼して帰った。

裁判で津田は、「若い女性が患者の場合、不必要な触診をして、体を触っている事など、ゲームセンター仲間と雑談していて、仲間もムラムラしていて、ゲームセンターから出ると若い女性がいたので思わず輪姦してしまった。」と犯行を認めた為に有罪になり事件は解決した。


次回投稿予定日は、6月22日を予定しています。

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