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第八章 出世争い

ある日、前田刑事が貯金して鶴千代を指名して料亭で楽しんでいた。

広美は前田刑事と雑談していると、自分の話になった。

広美は、「京都府警の鬼軍曹ってそんなに怖いの?」と自分がどう思われているのか興味がある様子でした。

前田刑事は、「怖い事は怖いですが、そのおかげで助かっています。後で考えると、あの怖さがなければ私は何度も始末書を提出していたでしょう。」と広美に感謝している様子でした。

広美は、本当に手が掛るんだからと呆れていたが、前田君も解ってくれているようなので安心していた。

    **********

しばらく雑談していると、前田刑事と広美の携帯に着信があった。

緒方係長が、「林君、今晩浦田電気の専務、松島紀夫さんのお座敷だといっていたが、その浦田電気の志垣太郎社長が殺害されました。松島専務に探りを入れて下さい。」と指示した。

広美は、「了解。」と電話を切った。

前田刑事も電話を終えて、「鶴千代さん、申し訳ございません。まだ少し時間がありますが急用ができたのでこれで失礼します。」と帰ろうとしていた。

広美は、今私が受けた携帯は鶴千代専用携帯ではなく、捜査一課主任の携帯だと気付いていないようね。呼び出し音を同じにしておいて正解だったわ。と安心していた。

広美は、「そうですか。それでは私も次の浦田電気の松島専務のお座敷に向かいます。」と前田刑事の顔色を窺っていた。

前田刑事は驚いて、「鶴千代さん、浦田電気の志垣社長が殺されました。明日にでもお座敷での様子を聞かせて下さい。」と依頼して事件現場に向かった。

現場に到着した前田刑事は広美がいない事に気付いて、「主任はまだですか?」と不思議そうでした。

緒方係長が、「主任は既に浦田電気に潜入しています。」と説明した。

    **********

翌日広美は、「前田!部外者の鶴千代に浦田電気の志垣社長が殺されたと漏らしただろう!」と前田刑事を睨んだ。

緒方係長は、「鶴千代さんと主任とは昵懇の間柄だと何度も説明しただろう。」と鶴千代の正体を知っているので笑っていた。

前田刑事は、「鶴千代さんは、今から浦田電気の松島専務のお座敷だと言っていたので、後日話を聞かせて頂きたいとお願いしただけですよ。」と誤魔化そうとしていた。

広美は、「話を聞く時に社長が殺された事を伝えればいいでしょう。松島専務に会う前に殺された事を伝えれば、お座敷で鶴千代が松島専務から何かを聞き出そうとして変な事を聞いたり、情報収集しようとして何人かから話を聞いたりすれば、殺人事件だと噂が広まる可能性があるわよ。」と睨んだ。

前田刑事は、「解りました。以後気を付けます。鶴千代さんに松島専務の様子を聞いてみます。」と電話しようとしていた。

    **********

広美は、「既に私が話を聞いたわ。その時、鶴千代が殺人事件だと知っていたから前田が漏らした事に気付いたのよ。社長が殺される事は知っていたような口ぶりだったそうよ。」と説明した。

前田刑事が、「浦田電気の松島専務から事情を聞いてきます。今回の事件は早く解決しそうですね。」と油断していた。

しばらくすると前田刑事が、「浦田電気の松島専務にはアリバイがありました。」とションボリと帰ってきた。

広美は、前田君一人に行かせたのは失敗だったと反省していた。

広美は、「それでのこのこ帰って来たのか!誰かに殺人を依頼した兆候はなかったの?社内に仲間はいなかったの?」と何をしていたのか呆れていた。

    **********

広美は、「西田刑事、渡辺刑事、社内に仲間がいなかったのかや噂など調べて下さい。前田刑事、須藤刑事、松島専務の交友関係を調べて下さい。」と指示した。

聞き込みを終えて府警本部に戻った渡辺刑事が、「浦田電気の志垣社長が殺された事をフリールポライター沢村武が気付いて色々と取材しているようです。」と報告した。

西田刑事が、「沢村は悪質なルポライターで、取材した内容で脅迫まがいの事をしていたようです。今回も志垣社長が殺される前から浦田電気に不穏な動きがある事を掴んで取材していたようです。」と報告した。

前田刑事と須藤刑事が、「松島専務の交友関係には特に怪しい人物はいませんでした。」と報告した。

広美は、「社内での事を詳しく調べて下さい。」と刑事達に指示した。

須藤刑事が、「次期社長の座を巡って、松島専務と副社長の田中陽介との間で争いがあったようでした。社員も田中副社長派と松島専務派とに真っ二つに分かれていて空中分解寸前です。」と報告した。

広美は、「その争いが殺人の動機なら、田中副社長か松島専務が襲われる可能性があるわね。」と二人の身辺調査を指示した。

三日後前田刑事が、「二人の身辺調査を徹底的にしましたが、殺人を犯しそうな人物はいませんでした。」と報告した。

広美は、「本当に?私が捜査して、怪しい人物がいればどうする?係長、こいつらは頼りにならないので私が捜査します。」と捜査本部をでた。

    **********

翌日広美は、「フリールポライター沢村武をマークして下さい。」と指示した。

前田刑事が、「松島専務か田中副社長が沢村を利用したのですか?あんな怪しい男を使わないでしょう。後で脅迫される可能性もあるのではないですか?」と信じられない様子でした。

広美は、「行き詰った時、他に容疑者がいなければ、容疑者を出生から調べろと以前教えたでしょう。松島専務は、弟思いの、いいお兄様だったらしいわよ。」とヒントを与えた。

前田刑事は、「松島専務に弟はいませんよ。」と指摘した。

広美は、「松島専務の実家は貧乏で、弟を施設に預けたらしいわよ。その後子どもに恵まれなかった沢村家に引き取られたそうです。その後、沢村家に赤ちゃんができたそうです。里親は、分け隔てなく育てたそうですが、無意識に自分の子どもを大切にしていたそうよ。それで沢村はあんな性格になってしまったらしいわよ。松島専務は将来弟を取り戻そうとして、子どもの頃から勉学に励んで今の地位を築いたらしいわよ。沢村は松島専務の実の弟よ。気付かなかったの?」と頼りないわねと呆れていた。

前田刑事は、「松島専務が黒幕か。」と呟いていた。

広美は、「松島専務が指示した可能性もありますが、例えば松島専務が沢村に、“俺が社長になればお前の面倒はみる。”とそれまでやばい事をせずに待っていろと言った言葉が沢村には殺しの依頼に聞こえた可能性もあるわ。」と決めつけないように指示した。

刑事達は、「了解!」と松島専務と沢村とに分かれてマークしていた。

    **********

数日後、前田刑事が、「沢村を見失いました。」と広美に報告した。

沢村は田中副社長に、「お前が社長になる為に殺した事は解っている。週刊誌に書かれたくなかったら金をもってこい!」と電話で脅した。

田中副社長は、「私は殺してない。濡れ衣だ!松島が・・・」と反論していた。

沢村は、「松島専務にはアリバイがあった。お前しかいないんだ。お前がなんて言っても週刊誌に書けば世間はどう思うかな?試してみようか。」と更に脅した。

沢村は田中副社長を脅迫して呼び出した。

田中副社長はこのような事に慣れていない為に刑事の尾行に気付かなかった。

沢村が田中副社長を殺そうとしていると、広美達刑事が銃を構えて、「警察です。刃物を捨てなさい。」と迫った。

広美は、「社長を殺害したのはあなたね。殺人罪で逮捕します。」と刑事達で取り囲んで連行した。

沢村が逮捕されたと聞いて松島専務が警察に慌てて来て、「俺が社長になるまで待てと言っただろう。なんて馬鹿な真似をしたんだ。真面目に努めて出所したら俺の所に来い。」と沢村の肩を叩いた。

    **********

前田刑事は、「これで事件も解決ですね。」と安心していた。

広美は、「鶴千代は社長が殺される事を松島専務が知っていたような口ぶりだったと言っていたわよね。鶴千代になんて説明するの?私から前田刑事は鶴千代の事を信用していないと説明しておこうか?」と事件の裏を前田刑事に捜査させようとしていた。

前田刑事は、「待って下さい。私が松島専務を調べます。」と捜査を始めた。

広美は他の刑事達に、「何しているの?あなた方も手伝ってあげなさい。」と指示した。

数日後前田刑事が、「証拠がない為にこれ以上無理です。」と弱気でした。

広美は松島専務からお座敷の指名があった為に、「本当に?私が捜査して証拠がでたらどうする?」と前田刑事を睨んだ。

西田刑事が、「今度ばかりは無理だと思いますよ。」と前田刑事の肩を持った。

広美は、「それじゃ、私が調べるわ。」と芸者の準備の為に帰宅した。

    **********

松島専務は政治家の臼田光男の接待をしていた。

そこへ広美が鶴千代としてきた。

臼田議員は、「お前もタヌキだな。しかし弟思いだったのに何故だ?」と不思議そうでした。

松島専務は、「先生に弟はいませんか?子どもの頃は弟の世話を親から頼まれませんでしたか?それで弟の世話をしていただけで、私は弟思いじゃないですよ。私が弟にああいえば、順番からして次期社長は副社長で、その次になるので私が社長になるのは何年、いや何十年先になると思うでしょう。弟の性格からして待てないと判断したのですよ。」と笑っていた。

臼田議員は、「しかし、出所後、お前の所に来るように言ったそうだな。本当に来たらどうするのだ?」と心配していた。

松島専務は、「弟は殺人罪ですよ。それも自分の利益の為に殺人を犯したのだから、簡単に出てこられないでしょう。生きている間に出所できるか疑問ですね。たとえ出所できてもよぼよぼのお年寄りですよ。私もですがね。どこかの老人ホームに預ければ終わりですよ。これで先生に渡す裏金も倍増しますよ。」と問題ないと考えていた。

臼田議員は、「政治資金と言いたまえ。」と不満そうでした。

広美はその会話を録音していて、翌日捜査本部に、「松島専務が黒幕と密会していて、その会話を録音したわよ。黒幕は臼田議員よ。二人に任意同行求めて。」と指示した。

二人とも最初は否認していたが、録音した内容を聞かせると諦めて自供して事件は解決した。


次回投稿予定日は、6月16日を予定しています。

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