第十章 芸者刑事、事件に巻き込まれる
世間では銀行強盗が多発していたが、警察はなぜか逃走車両を発見できなかった。
死人もでていた為に、殺人事件として捜査一課五係が担当していた。
数ヶ月間、広美は仕事の合間に母の手伝いをしながら何事もなく過ごしていた。
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そんなある日、広美が帰ると母から、「小梅のお母さんが交通事故で重体と聞いて、慌てて病院に行ったのよ。広美、ピンチヒッターお願い。」と宴会のコンパニオンを頼まれた。
広美が宴会コンパニオンをしていた頃に、警ら中のパトカーが不信車両を発見した。
停止を命じたが、無視して逃亡した。
数台のパトカーに囲まれた不審車両に乗っていた男三人が、車を乗り捨てて広美がコンパニオンをしている宴会場に逃げ込んだ。
捜査一課三係に事件発生の一報があり、帰宅した刑事達に連絡していると広美から緒方係長にメールが入った。
緒方係長は集合した刑事達に、「すでに林君は現場に潜入しています。今メールがあり、犯人は三人組で三人とも拳銃を所持しているとの事です。全員防弾チョッキを着用して拳銃を携帯の上、現場に向かって下さい。」と指示した。
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現場に到着すると緒方係長は、「今林君からメールがあり、人質は宴会客十八人とホテルの従業員が三人とコンパニオンの芸者が二人で合計二十三人だそうです。犯人は主任が刑事だとは気付いてないと思いますので、私が交渉役として内部に入ります。」と刑事達に伝えた。
しばらくすれば緒方係長が出てきた。
「犯人は逃走用の車と食事を要求しています。宴会場に電話がないので、今後の交渉手段として、犯人一味に無線機を渡してきました。それと、スキを見て林君に拳銃と盗聴器を渡してきました。」と刑事達に伝えた。
その後、犯人の一人がトイレに行ったなど、犯人と人質の動きを逐一連絡してきた。
やがてチャンスが訪れた。
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「犯人一味の主犯格の男がトイレに行きました。リーダーが不在の為、気が緩み残り二人の犯人が雑談を初めて注意散漫になっています。二人とも入口と反対側の壁にいます。私がサポートします。踏み込むのは今です。」と連絡してきた。
緒方係長は警官隊に突入命令を出した。
二人の犯人は人質がいるので、まさか警察が突入して来ないだろうと油断していた為に、広美の協力もあり簡単に人質と引き離された。
緒方係長は人質救出を指示して、広美と接触して主犯格の男が向かったトイレを確認して向かった。
刑事達は二人の犯人と格闘していたが、渡辺刑事はそれに加わる事ができずにいた。
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広美が、「ほら刑事さん、何しているの?ここには刑事が数人いますが、先程あなたの上司の刑事が一人で奥に行ったわよ。応援に行かなくても良いの?」と目先の格闘に捕われずに全体を見るように助言した。
渡辺刑事が奥に行くと緒方係長が足を撃たれていた。
驚いている渡辺刑事に緒方係長は、「犯人は向こうに逃げた。俺の事は良いから追え!」と指示した。
消音銃でしたので誰も銃声に気付かなかった。
戸惑っている渡辺刑事に広美は、「ほら、刑事さん、手柄をたてるチャンスですよ。」と背中を押した。
渡辺刑事が向かい、広美もその後を追おうとした時に緒方係長が、「林君、渡辺君の事を頼む。」と頼りない渡辺刑事のサポートを依頼した。
広美は、「了解!」と敬礼して、渡辺刑事を追った。
緒方係長は、「行っちゃった。けが人を気遣い、人を呼ぶくらいしてくれないとはさすが鬼軍曹だな。」と痛みに耐え苦しんでいた。
しかし優しい芸者の広美は渡辺刑事に気付かれないように、無線で緒方係長が足を銃で撃たれて動けない事を知らせていた。
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渡辺刑事と広美が犯人を追うと行き止まりで会議室があった。
広美は、「刑事さん、行き止まりですね。この会議室に窓はありません。出入り可能なのはここだけです。犯人はこの会議室のどこかに隠れている可能性が高いですね。犯人は拳銃を所持していると思われます。拳銃を構えなくてもいのですか?」と助言して警戒していた。
犯人は広美が刑事だとは思わず、ただの芸者だと判断して背後から左腕で広美の首を絞めて右手の拳銃を広美に向けて、「拳銃を捨てろ!」と渡辺刑事を脅迫した。
その次の瞬間、私が渡辺刑事の足手まといになるわけにはいかないと判断した広美が、かかとで犯人のつま先を蹴って、犯人が怯んだスキに、得意な柔道で犯人を投げた。
広美は、拳銃を持っている右手をねじあげて、「刑事さん、手錠!」と渡辺刑事に手柄を立てさせた。
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二人の犯人一味を逮捕して人質を救出した刑事達が緒方係長を救出後来て、「渡辺!お前もやればできるじゃないか。大手柄だ。」と大人しい渡辺刑事が主犯格の男を逮捕した事に驚いていた。
主犯格の男が、「冗談じゃない。俺がこんな腰ぬけに捕まるわけ無いだろう。」と鼻で笑い、広美を睨んで、「女!ただの芸者ではないな。察の犬か。」と広美の正体を知ろうとしていた。
前田刑事が、「負け惜しみか。彼女は見たとおり芸者だ。私達警察とは関係ないよ。」と復讐されないように、鶴千代の名は出さなかった。
三人を取り調べた。
黙秘権を盾に名前も喋らなかった。
そんな中、緒方係長が捜査一課長から呼び出された。
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緒方係長が戻ってきて全員に、「今回我々が逮捕した三人組は、今五係が担当している連続銀行強盗事件の実行犯の可能性が高いそうだ。パトカー警官に確認すると、車に乗っていたのは四人だったそうだ。残りの一人が黒幕に報告に行く可能性がある。五係の調べでは、黒幕は裕福に花町で芸者遊びをしていて、そこに犯人の主犯格の男を呼んでメモを渡していたそうだ。今回五係と共同で捜査する事になった。その料亭に林君、君が潜入するようにと一課長からご指名だ。当日は全員料亭の外で待機して、林君からの連絡を待て。銃撃戦になる可能性を考慮して拳銃の手入れを怠るな。」と指示した。
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刑事達が防弾チョッキや拳銃の手入れをしている間に緒方係長は広美と打ち合わせしていた。
「一課長は、君が芸者として今まで事件を解決していた事をご存知だ。今回芸者として潜入するようにと指示があった。頼むぞ。」と指示した。
広美は、「なぜ一課長が知っているのですか?係長も口が軽いですね。」と係長を疑っていた。
緒方係長は、「今回、宴会場の隣の部屋で一課長秘書が婚約者とデートしていました。ドアの隙間から様子を窺っていて秘書から、私が鶴千代に拳銃を渡していた事や、その動きを聞いた一課長に問い詰められて仕方なく喋ってしまいました。この事は私だけしか知らず、刑事達は知らない事を伝えて口止めしておきました。」と申し訳なさそうに説明した。
広美は、“係長だけではなく、今後一課長にもこき使われそうだわ。”と諦めた。
緒方係長は、「しかし一課長は、以前から君が芸者だと知っていたような口ぶりだったが、何か覚えはないのか?」と以前お座敷で会った事があるのかな?と不思議そうでした。
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帰宅後広美は母に、「政治家の鬼頭洋介国会議員からお座敷の声がかかったら私に回して。」と依頼した。
初美は、「鬼頭洋介国会議員は小菊のお客様よ。それを広美に回すのは、それだけの理由が必要なのよ。でないと小菊も納得しないわよ。事件がらみなの?どんな事件なの?」と小菊に説明する為にその理由を聞いた。
広美は、「事件の事は説明できないわ。銃撃戦に巻き込まれる可能性がある為に他の芸者に行かせないで。芸者は私一人でいきます。」と詳しい説明はできない事を伝えて、宴会場で逮捕したメンバーは、全員拳銃を所持していた為、銃撃戦になる可能性だけを伝えた。
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初美は、「銃撃戦?大丈夫なの?いざとなったら倉田さんに助けてもらいなさいね。」と助言した。
広美は驚いて、「倉田さん?捜査一課長の倉田さんの事?何故お母さんが一課長を知っているの?うちのお客さま?」と何故母が一課長を知っているのか不思議そうでした。
初美は、「広美も冷たいわね。倉田純一さんを忘れたの?広美が中学生の時に暴漢に襲われたでしょう?その時に助けてくれて家まで送ってくれた刑事さんよ。」と説明した。
広美は、「あっ!?」と思いだして、部屋に戻りアルバムを確認して、その時撮影した写真を見て、「えっ?嘘、一課長!」と何故広美が芸者だと一課長が知っていたのか納得していた。
次回投稿予定日は、6月25日を予定しています。




