Ep.6 激動
お盆・・・。仕事か。
拙い作品ですが、お目通しいただければ幸いです。
Ep.6 激動
老人の家に入ると、ケンは少し驚く。
自然の中にひっそりと作られている村の割には、シャンデリアや大理石のテーブルなど、豪華な家具がそろっていたからだ。
ケンは老人の家に入ると、少し高価そうな絨毯の上に横たわった。
マリは、その奥にあった椅子に腰をかけ、老人をしばらくじっと見た。老人はただただ、何から話したら良いか困惑するように、マリを見つめ返す。
しびれを切らしたマリが、老人に問いかける。
「それで、何があったの?黙っているだけじゃ分からないよ。」
老人は少しため息をついた後に、腰を掛けなおして話し出した。
「うむ・・・。隠すつもりは無いんだが・・・。何から話したら良いか分からなくてのう・・・・。」
「まず、マリは良いが、君は大国と呼ばれている国々とは何の関係もないかい?」
「ああ、関係も何も俺は今日この世界に運ばれてきたんだ」
「私が保証するわ。なんせ、水之谷国がボコボコにして捨ててたんだから、間違いないわ!」
そんなことを自信満々に言うマリに対し、ケンは少し微妙そうな表情を浮かべる。
「そうなのかい、ならまあ信じても良いかね。」
「まず、ここラウネ村は、大自然の中に賢者と呼ばれた男が切り開いた村なのだ。そして、この村の住人の祖父母にあたる人物たちは、多くは大国で奴隷や下僕の生活を送っていた人間たちだ。」
そう言って、老人は自身の背中の雫のようなマークの焼き印をケンとマリに見せる。
「それが、私の師匠なんでしょう?それは前回来た時に聞いたわ。」
「それに、私が旅した時に頼りにしたのはそういった村々だったし、大変だった話も色々と聞いたわ。それがどうしたの?なんでミリーがいない・・・」
矢継ぎ早に話すマリを、ケンは魔力で口を閉じて落ち着かせる。
「まずは、話を聞かないと分からないだろう?」
「そうね・・・。」
「かまわないよ。ミリーとは仲良くしてくれていたからねえ。」
「続きを話すよ?多くの卑しい身分のものたちで構成されたこの村を、大国が気に入るはずもない。」
「そんな中で、密偵を放ち、近くに隣接する大国の欲しい作物や資源を知らべ、生産・加工して上納することで何とかやりくりしていた。」
「そもそも、異人でもない卑しい身分の人間に興味が無いからのう。」
「それで、どうして若者がいなくなるんだ?」
「異変が起きたのは数週間前からじゃ。大国に潜入していた密偵と連絡が取れなくなり、村の周辺に出ていた者たちの行方不明が起きた。最初は村を裏切ったと考えておったが、2週前に3mを超える化け物が村を襲撃したんだ。」
段々と語気が強くなり、ヒートアップしていたことに気が付いた老人は、一呼吸を置き、再度話し始めた。
「何とか槍やバリスタを用いて倒したが、倒した後が問題じゃった。」
「その怪物の背中に、’水の雫の焼き印’があったんじゃ。」
それを聞いて、ケンやマリは嫌な仮説を頭に思い浮かべてしまう。
「何となく、察しがついたようじゃな。詳しく調べたら、密偵の奴が掘っていた入れ墨と同じものを見つけたのじゃ・・・。」
「それから、村全体で見張りを強化し、村人が村の外に出ないように注意していたのじゃが、三日前村の人間と思われる怪物30体と異人3人が姿を現した。」
「もちろん、我々も村の人間を守ろうとしたのじゃが、気づいたら眠らされていた。そして、起きたときには・・・・。これが事の顛末じゃ。」
老人が話し終えたと同時に、マリは立ち上がる。
「おい、どこに行くんだ?」
「ミリーたちを助けなきゃ!」
「一人で?どこにいるかも分からないのに?」
「だからって、放ってはおけないよ!」
「まあまあ、今この家を飛び出してどっか行っても無意味なことくらいわかるよな?」
「それはそうだけど・・・・。」
そう言って、マリは不機嫌を前面に押し出しながら、黙り込む。
「気持ちは嬉しいが、大国に挑んだとしても、殺されて力を吸い取られるのオチじゃ。」
更なる追撃で、マリはうなだれるように椅子にもたれかかった。
「もう夜も遅い。部屋はたくさんあるから、食事でもとってゆっくりしていってくれ。」
そう言って、老人は食事の用意をした。
用意されたフランスパンのような硬いパンと野菜のスープを、ケンは器用に魔力で浮かしながら食べた。
最初は食欲のなかったマリも、夜通し歩き疲れていたからか、無我夢中で食べきった。
「ふう、美味しかった。いい加減、腕が無いのが不便だな。」
そう言いいながら、ケンは自身の体を見つめる。
「そうだよね・・・。その問題もあったわね・・・。」
少し、申し訳なさそうにマリはうつむく。
「そうだよ、結局どうしたら良いんだ?」
少し、言いにくそうにマリは口を開く。
「・・・・・・ミリーがいないと出来ないのよ。」
「師匠が作った、人間の組織を生やせるマジックアイテムがあるのだけれども、その断面と縫合しなくちゃいけないの。その縫合の経験があって、十分に信頼できるのはミリーしかいないのよ・・・。」
ケンはめまいを覚える。
(俺もミリーを助けなきゃいけなくなったじゃねえか・・・。)
「はあ・・。他の人に頼んだりは・・・」
「私の知る限り、あれば才能がないと出来ないと思うわ・・。」
「そう、か・・・。」
「とりあえず、今日は休んで明日から考えよう。」
「そうね・・・。」
そんな話をしていると、ケンの背後に老人が立つ。
「話が付いたなら早く横になりなされ。あっちにベッドがあるから。」
慌てた手つきで案内する老人を変だと感じたが、疲労が強く、ケンとマリは床に就く。
この世界での初めての就寝のためか、ケンはぐっすりと深い眠りについた。
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ケンは少し寝返りを打とうとする。しかし、体が動かない。
かろうじて動く首を左右に振ると、そこには見慣れない岩の壁が広がっていた。
そして視界の端に、白い長髪を束ねた白衣の男性がうつる。
「目覚めたかね。貴重な実験動物002号くーんー。」
「ようこそこの世の楽園に~」
「私はデンティル。科学者だよ~。分かるー?科学者。意外と異人でも知らない人多いからさー。困っちゃうよね!それでさそれでさー。君の体を細かく分析させてもらうよう~。」
ケンはこの世界にきて初めて震える。
知らない世界、自分の名前すら知らない。そんな中、両手が無くなり、体が動かなくなるほど痛めつけられても痛みを感じず、魔法が使えることが分かり、美人な少女に助けられて旅が始まりワクワクしていた。
しかし、今回はやばい。本能からそう訴えかけられる。
そんな恐怖で包まれている中、ケンは絞り出すように声を出す。
「マリは、どう・・し・・・た?」
「ああ~、001号先にオリエンテーションが終わったようん~」
「今は吠え疲れて、あっちでうなだれてるよん~」
そう言って指をさした先に見えたのは、全身に切り傷があるマリの姿だった。
まだ出会って間もなく、思い出もないケンだが、フツフツと怒りがわいてくる。
「お前は・・・。生きている人間を何だと思ってるんだ?」
「何をそんなに怒ってるのよ~。どうせ異人だし、いいじゃない~。まあ、私もだけど~。」
「下手に逃げようなんて思わないことね~。私、こう見えても強いから~」
平和な旅が始まったと思われた矢先、ケンの旅は激動の渦に巻き込まれていく。
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