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11. 他電源との比較――欠点の種類を見誤るな

 メガソーラーを評価するとき、よくある反論がある。


「では、他の電源には欠点がないのか」

「原発にも危険がある」

「火力はCO₂を出す」

「水力も環境を変える」

「どの発電方式にも問題はある」


 これはその通りである。


 欠点のない電源など存在しない。


 原子力にも欠点はある。

 火力にも欠点はある。

 水力にも欠点はある。

 風力にも欠点はある。

 太陽光にも欠点はある。


 しかし、ここで重要なのは、欠点があるかどうかではない。


 重要なのは、欠点の種類が何かである。


 すべての電源に欠点があるからといって、すべての欠点が同じ重さになるわけではない。


 また、ある電源の欠点を指摘されたときに、「他の電源にも欠点がある」と返しても、その電源の問題が消えるわけではない。


 見るべきなのは、欠点の性質である。


 その欠点は、平時のコストなのか。

 災害時のリスクなのか。

 有事の安全保障問題なのか。

 廃棄物の問題なのか。

 土地利用の問題なのか。

 地域社会への負担なのか。

 将来世代への先送りなのか。

 国内で管理できる問題なのか。

 海外依存によって悪化する問題なのか。


 この分類をしなければ、電源比較は単なる印象論になる。


 原子力発電には大きなリスクがある。事故時の被害、放射性廃棄物、廃炉、避難計画、安全審査、核燃料サイクル、テロ対策など、重い問題を抱えている。これは軽く扱うべきではない。


 しかし、原子力の特徴は、少ない燃料で大量の電力を安定的に生み出せることにある。発電密度が高く、天候に左右されにくく、設備が正常に運転されていれば大きな出力を継続できる。欠点は重いが、その欠点は主に安全管理、事故時リスク、廃棄物、廃炉に集中している。


 火力発電にも欠点がある。燃料を輸入し続ける必要があり、CO₂を排出し、燃料価格や国際情勢に左右される。化石燃料依存は、環境面でも安全保障面でも弱点になる。


 一方で、火力は出力調整がしやすく、需要に合わせて発電できる。天候に左右されにくく、電力系統の調整役としても機能する。欠点は燃料費、CO₂、輸入依存、価格変動である。


 水力発電にも欠点がある。ダム建設は河川環境を変え、生態系や地域社会に影響を与える。堆砂、老朽化、土砂管理、ダム下流への影響もある。新規の大規模開発には限界もある。


 ただし、水力は安定性が高く、調整力を持つ場合もある。既存設備を活用できるなら、電源としての価値は高い。欠点は初期の環境改変と維持管理、立地制約である。


 風力発電にも欠点がある。風況に左右され、騒音、低周波、景観、鳥類への影響、洋上設備の保守、台風への耐性などが問題になる。太陽光と同じく自然条件に依存するため、安定電源ではない。


 では、メガソーラーの欠点は何か。


 メガソーラーの欠点は、単に「天候に左右される」だけではない。


 その本質は、低密度・広域占有・不安定・長期管理・廃棄・供給網依存が同時に発生する点にある。


 メガソーラーは広い土地を必要とする。

 夜には発電しない。

 天候で出力が変わる。

 災害で機能不全になりやすい。

 広範囲の保守が必要になる。

 雑草、清掃、盗難、排水、故障対応が必要になる。

 部品交換が必要になる。

 寿命後には撤去と廃棄が必要になる。

 部材供給が中国系サプライチェーンに依存しやすい。

 山林や自然回復可能地を占有すれば、国土機能まで変えてしまう。


 つまり、メガソーラーの弱点は、単独の一点ではない。


 複数の負担が積み重なる構造にある。


 ここを見誤ってはいけない。


 たとえば、「原発にも廃棄物がある」という反論がある。


 確かに原発には放射性廃棄物という非常に重い問題がある。


 しかし、それを理由にメガソーラーの廃棄問題が軽くなるわけではない。


 原発の廃棄物問題と、メガソーラーの廃棄物問題は性質が違う。


 原発の廃棄物は、危険性が高く、長期管理が必要で、社会的合意も難しい。


 一方、メガソーラーの廃棄物は、広い土地に分散して設置された大量の人工物が、寿命後に一斉に処理対象となる問題である。


 危険の種類も、管理の形も、空間的な広がりも違う。


 だから、どちらか一方の欠点を理由に、もう一方の欠点を無効化することはできない。


「火力はCO₂を出す」という反論も同じである。


 火力がCO₂を出すことは事実である。


 しかし、だからといってメガソーラーの土地改変、災害脆弱性、廃棄、保守負担、中国系サプライチェーン依存が消えるわけではない。


 火力の欠点は主に燃料と排出である。


 メガソーラーの欠点は主に土地、低密度、不安定性、保守、廃棄、供給網依存である。


 欠点の種類が違う。


「水力も自然を壊す」という反論もある。


 これも事実である。ダムは大きな自然改変を伴う。


 しかし、既存水力を維持・更新する話と、新たに山林や高原をパネルで覆う話は同じではない。


 自然改変があるという共通点だけで、電源としての性質まで同一視することはできない。


 電源比較で大切なのは、単純な善悪ではない。


 問うべきなのは、

 どの欠点なら管理可能なのか。

 どの欠点が日本で重く出るのか。

 どの欠点が将来世代に残るのか。

 どの欠点が国土を不可逆的に変えるのか。

 どの欠点が有事に深刻化するのか。

 どの欠点が国内で制御できるのか。

 どの欠点が海外依存を深めるのか。


 この比較で見ると、日本におけるメガソーラーの弱点はかなり重い。


 なぜなら、日本はメガソーラーの欠点が出やすい国だからである。


 日本は平地が少ない。

 森林と山地が多い。

 災害が多い。

 生活圏と自然地が近い。

 火山灰や台風や豪雨のリスクがある。

 労働力不足も進む。

 太陽光部材の多くを海外に頼りやすい。

 将来の廃棄問題も重くなる。


 つまり、日本では、メガソーラーの低密度性、不安定性、広域保守負担、災害脆弱性、廃棄問題、供給網依存が同時に表面化しやすい。


 これは、単に「太陽光にも欠点がある」という程度の話ではない。


 日本の国土条件が、その欠点を増幅するのである。


 一方で、太陽光発電にも向いている使い方はある。


 住宅の屋根。

 工場や倉庫の屋根。

 駐車場の上。

 既開発地。

 工場跡地。

 埋立地。

 自家消費用の小規模設備。

 非常時の補助電源。


 これらは、メガソーラーとは性質が違う。

 既存空間を利用するなら、土地改変は小さい。


 管理もしやすい。


 発電した電気をその場で使えるなら、送電負担も小さくなる。


 災害時の補助電源として意味を持つ場合もある。


 問題は、太陽光発電そのものではない。


 問題は、低密度で不安定な電源を、広大な土地改変を伴う形で社会インフラ化することである。


 ここを混同してはいけない。


 メガソーラー推進論では、しばしば太陽光の利点だけが語られる。


 発電時CO₂が少ない。

 燃料費がいらない。

 再エネ比率が上がる。

 設置が早い。

 海外でも進んでいる。


 だが、これらは他電源との比較としては不十分である。


 電源には、それぞれ役割がある。


 安定して大きな出力を出す電源。

 需要に応じて出力を調整する電源。

 地域で補助的に使う電源。

 非常時に役立つ電源。

 燃料備蓄が効く電源。

 長期的に低コストで使える電源。

 土地利用の負担が小さい電源。


 メガソーラーは、この中でどの役割を担うのか。


 主力安定電源としては弱い。


 夜間には発電できない。


 天候で出力が変わる。


 大規模化すると土地負担が重い。


 送電網や蓄電の補完が必要になる。


 災害時には広域で機能不全になる可能性がある。


 そのため、メガソーラーを他電源と比較するなら、「再エネだから良い」ではなく、「どの役割を担えるのか」を見るべきである。


 たとえば、原子力は大きな事故リスクと廃棄物問題を抱えるが、安定出力という役割がある。


 火力はCO₂と燃料輸入依存を抱えるが、調整力という役割がある。


 水力は立地制約と河川環境への影響を抱えるが、既存設備では安定性や調整力を持つ。


 屋根上太陽光は出力の不安定性を抱えるが、既存空間活用や自家消費という役割がある。


 では、メガソーラーは何を担うのか。


 広い土地を使う。

 出力は不安定。

 発電は昼間中心。

 自然環境を変える。

 保守が必要。

 廃棄が必要。

 供給網依存がある。

 災害時に弱い。


 この条件で得られる電力が、国土・地域・将来世代の負担に見合うのか。


 ここが本当の比較点である。


 電源比較で最も避けるべきなのは、欠点のすり替えである。


「原発が危険だからメガソーラーは正しい」

「火力がCO₂を出すからメガソーラーは正しい」

「水力も自然を変えるからメガソーラー批判はおかしい」


 これらは正しい比較ではない。


 他電源の欠点は、メガソーラーの正当化にはならない。


 メガソーラーの欠点は、メガソーラー自身の条件で検証されなければならない。


 同じように、メガソーラーの欠点を指摘することは、他電源を無条件に肯定することでもない。


 原発には原発の問題がある。

 火力には火力の問題がある。

 水力には水力の問題がある。

 風力には風力の問題がある。

 太陽光には太陽光の問題がある。


 必要なのは、それぞれの欠点を正確に分類し、日本の条件でどれが最も管理可能かを考えることである。


 特に日本では、単一の電源ですべてを解決する発想は危険である。


 安定電源、調整電源、分散電源、省エネ、蓄電、送電網、需要管理を組み合わせる必要がある。


 その中で、太陽光を使うなら、国土改変の小さい形を優先すべきである。


 屋根上、工場屋根、駐車場上、既開発地、自家消費型などである。


 一方、山林開発型・斜面造成型・自然回復阻害型のメガソーラーは、他電源の欠点を持ち出してまで正当化するほど優れた選択肢とは言いにくい。


 なぜなら、その欠点は日本で重く出るからである。


 土地を使う。

 自然を固定化する。

 災害に弱い。

 広域管理が必要になる。

 廃棄が後から来る。

 部品を海外に依存しやすい。

 リスクが地域や将来世代に残る。


 これらは、発電時CO₂が少ないという一点だけで打ち消せるものではない。


 他電源との比較で大切なのは、どの電源が完全かを探すことではない。


 完全な電源は存在しない。


 大切なのは、欠点の種類を見誤らないことである。


 原子力の欠点。

 火力の欠点。

 水力の欠点。

 風力の欠点。

 太陽光の欠点。


 そして、メガソーラー特有の欠点。


 それぞれを分けて、日本の国土、災害、労働力、供給網、廃棄責任に照らして評価する。


 その作業をせずに、「他にも問題があるからメガソーラーを批判するな」と言うのは、比較ではない。


 それは論点のすり替えである。


 メガソーラーの問題は、他電源にも欠点があることで消えない。


 むしろ、他電源との比較を正しく行うほど、山林開発型・大規模型メガソーラーの弱点ははっきりする。


 それは、発電量のわりに土地を使い、管理を増やし、災害時に弱く、最後には廃棄物を残し、供給網依存を深めやすい電源である。


 欠点の種類を見誤ってはいけない。


「どの電源にも欠点がある」は、議論の入口であって、結論ではない。


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