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12. 規制・制度・政策提言

 メガソーラー問題を本気で扱うなら、単に「反対する」だけでは足りない。必要なのは、どの類型を許し、どの類型を制限し、どの責任を誰に負わせるのかを明確にすることである。


 太陽光発電そのものには使い道がある。住宅屋根、工場屋根、倉庫屋根、駐車場、既開発地、埋立地、工場跡地など、国土改変が小さく管理しやすい場所であれば、一定の合理性はある。問題は、山林、斜面、高原、自然回復可能地、火災跡地、伐採跡地などを大規模に占有するメガソーラーである。


 したがって政策の基本方針は、次のように分けるべきである。


 屋根上・既開発地型の太陽光は促進する。


 山林開発型・斜面造成型・自然回復阻害型のメガソーラーは厳格に制限する。


 設置するなら、保守・災害・盗難・撤去・廃棄・供給網依存まで含めた責任を事業者に負わせる。


 これが、最も現実的で論理的な方向である。


 現在の日本でも、規制は強化されつつある。たとえば林野庁は、令和5年4月以降、地域森林計画の対象民有林で太陽光発電設備の設置を目的とする開発行為について、0.5ヘクタールを超える場合は都道府県知事の許可を必要とする制度に見直した。これは、太陽光発電による森林開発が、無視できない国土・防災上の問題になっていることを示している。


 さらに、令和8年4月施行予定の改正森林法では、林地開発許可の条件違反に対する罰則や、中止・復旧命令に従わない者の公表制度が新設される。これは、許可制度を作るだけでは足りず、違反時に実効的に止める仕組みが必要だという認識が制度側にも出てきたということである。


 保安面でも、令和5年3月20日から、10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備は「小規模事業用電気工作物」として新たに区分され、技術基準適合維持義務、基礎情報の届出、使用前自己確認が求められるようになった。さらに、50kW以上500kW未満の太陽電池発電設備にも使用前自己確認が義務化されている。


 廃棄費用についても、制度は後追いで整備されている。資源エネルギー庁は、2019年1月末時点で廃棄等費用の積立てを実施していた事業者が2割以下だったことを踏まえ、10kW以上のFIT/FIP認定太陽光発電事業を対象に、原則として売電収入から源泉徴収的に廃棄等費用を積み立てる制度を設け、2022年7月から順次開始している。


 この流れ自体は正しい。


 しかし、現行制度だけではまだ足りない。


 なぜなら、制度があることと、長期リスクを十分に管理できることは別だからである。環境省資料でも、FIT/FIPによらない太陽光発電設備への対応や、事業終了後の放置、不適正管理への懸念が示されている。つまり、すでに制度があっても、制度の外側や将来の管理不全が課題として残っている。


 太陽光パネルの廃棄・リサイクルも同じである。環境省資料では、現行法ではリサイクルが十分に義務化されておらず、リサイクルより安価な埋立処分が選択され、十分な再資源化が進んでいないこと、また将来的な排出増加によって最終処分場の残余容量を圧迫するおそれがあることが示されている。


 したがって、政策提言は「今ある制度で十分」という前提ではなく、今ある制度の弱点を埋める形で組み立てる必要がある。


 第一に、山林開発型メガソーラーは原則として厳格制限すべきである。


 森林は単なる空き地ではない。保水、土壌保護、斜面安定、水源涵養、生態系維持、景観形成の機能を持つ。これを削ってまで低密度で不安定な電源を置く合理性は、相当強い根拠がなければ認めるべきではない。


 特に、土砂災害警戒区域、水源地周辺、急傾斜地、保安林周辺、希少生態系のある地域、自然公園・湿地・景観保全地域に近い場所では、原則禁止に近い規制が必要である。単に「環境アセスメントを通った」では足りない。災害時の排水、土砂流出、地盤、周辺住民への影響まで、より厳しく見なければならない。


 第二に、自然回復可能地への設置も規制対象に含めるべきである。


 メガソーラーの問題は、森林を直接伐採する場合だけではない。火災跡地、伐採跡地、高原、草地、耕作放棄地にも、それぞれ自然回復や再利用の可能性がある。そこに大量のパネル、架台、フェンス、排水設備、管理道路を置けば、本来なら植林や自然遷移によって回復できた土地を、長期間人工物で固定することになる。


 したがって、規制は「今、木があるかどうか」だけで判断してはいけない。


 問うべきなのは、その土地が将来どのように回復できたのかである。


 植林できたのか。

 草地や高原としての生態系を維持できたのか。

 水源や土壌機能を取り戻せたのか。

 地域の景観資源として残せたのか。

 その回復可能性を発電事業で潰していないか。


 この観点を制度に入れる必要がある。


 第三に、撤去費用と原状回復費用は、事業開始時点から完全に担保すべきである。


 現在の廃棄等費用積立制度は重要だが、発電期間の後半に積み立てる方式だけでは不十分な場合がある。災害、盗難、事業者撤退、倒産、収益悪化は、いつ起きるか分からない。発電期間終了前の十年間に積み立てる設計では、それ以前に問題が起きた場合のリスクが残る。


 したがって、大規模メガソーラーについては、事業開始時点で保証金、保険、信託、第三者管理口座などを使い、撤去・廃棄・原状回復費用を実効的に確保すべきである。


 ここでいう撤去費用は、パネル廃棄だけではない。


 パネル。架台。基礎。杭。配線。接続箱。パワーコンディショナー。変圧器。フェンス。管理道路。排水設備。監視設備。土地の安定化。必要に応じた植林・自然回復。


 ここまで含めて費用を見積もるべきである。


 第四に、事業者倒産・撤退時の責任を明確化すべきである。


 メガソーラーは二十年、三十年単位で土地を占有する事業である。その間に事業者が変わることもある。所有者、運営者、保守業者、土地所有者、金融機関、投資ファンドが複雑に絡む場合もある。


 このとき、事故や撤去時に責任の所在が曖昧になってはならない。


 政策としては、発電事業者、土地所有者、親会社、特別目的会社、保守事業者、金融機関の責任関係を契約上だけでなく、行政上も把握できるようにする必要がある。事業譲渡時には、撤去責任・積立金・保守計画・廃棄計画も引き継がせるべきである。


 事業会社だけを軽く作り、利益を取った後に撤退できる構造は危険である。メガソーラーは土地と地域に長期リスクを残すため、責任も長期に残さなければならない。


 第五に、供給網依存の開示を義務化すべきである。


 メガソーラーはエネルギーインフラである。したがって、どの国の部材に依存し、故障時にどこから交換部品を調達し、パワーコンディショナーや蓄電池や監視システムがどの供給網に接続しているのかを把握する必要がある。


 特に太陽光パネルや主要部材は、中国系サプライチェーンへの依存が強い領域である。問題は国籍や民族ではなく、エネルギー設備の保守・更新・故障対応が特定国の供給網に縛られることである。


 したがって、大規模太陽光については、少なくとも次の情報を開示させるべきである。


 パネルの製造国。

 セル・モジュールの供給元。

 パワーコンディショナーの供給元。

 蓄電池を併設する場合の供給元。

 交換部品の調達計画。

 メーカー撤退時の代替調達先。

 有事・物流停止時の対応計画。

 保守業者と部品供給業者の関係。

 中国系サプライチェーンに依存する割合。


 これは差別ではない。安全保障とインフラ管理の問題である。


 第六に、災害リスク評価を強化すべきである。


 日本でメガソーラーを設置するなら、平時の発電量だけではなく、台風、豪雨、地震、火山灰、積雪、落雷、山火事への対応を事前に評価すべきである。


 特に火山灰は最悪ケースとして扱う必要がある。パネル表面を覆えば発電量は大きく落ちる。雨と混ざれば固着し、排水路を詰まらせる。パワーコンディショナーや接続箱、変電設備への影響も考えられる。広域降灰が起きれば、複数施設が同時に機能不全に陥る可能性がある。


 したがって、災害リスク評価には次を含めるべきである。


 想定最大降雨量。

 斜面崩壊リスク。

 排水能力。

 土砂流出リスク。

 台風時の耐風性。

 飛来物対策。

 地震時の架台・基礎の安全性。

 火山灰堆積時の清掃・復旧計画。

 積雪時の荷重・除雪計画。

 災害後の点検ルート。

 復旧人員・部品調達計画。

 広域災害時の優先順位。


 災害時に使えない設備を、安定した電源政策として評価するべきではない。


 第七に、盗難・治安対策を義務化すべきである。


 メガソーラーは、無人・屋外・広域に金属部材やケーブルを置く設備である。構造的に盗難リスクを抱えている。銅線やケーブルが盗まれれば、発電停止、修理費、保険料上昇、防犯費増加が発生する。


 したがって、大規模太陽光には盗難対策計画を義務化すべきである。


 防犯カメラ。侵入検知。警備体制。ケーブル保護。敷地巡回。盗難時の復旧計画。保険加入。地域警察・自治体との連携。被害発生時の報告義務。


 盗難リスクは「どの設備にもある」で片づけるべきではない。メガソーラーは広く、無人で、屋外にあり、金属部材が多い。構造的に狙われやすい設備である以上、防犯費も事業コストに含めるべきである。


 第八に、リサイクルと廃棄の義務化を強化すべきである。


 環境省資料では、リサイクルより安価な埋立処分が選択され、十分な再資源化が進んでいないことが課題として示されている。太陽光パネルの排出量が2030年代後半以降に増える見込みである以上、廃棄時に市場任せにするのは危険である。


 政策としては、一定規模以上の事業用太陽光について、排出計画の事前届出、認定リサイクル事業者への引渡し、処理結果の報告、費用確保を義務化すべきである。環境省の2026年資料でも、認定事業者への引渡しや再資源化費用の確保といった方向性が示されている。


 重要なのは、リサイクルを努力義務に留めないことである。


 努力義務では、採算が悪いと安価な処分へ流れやすい。


 処理費が高いと、放置や不適正処理の誘惑が生まれる。


 したがって、一定規模以上のメガソーラーでは、リサイクル・適正処理を実質的な義務として設計すべきである。


 第九に、補助制度は立地別に差をつけるべきである。


 太陽光発電を一律に支援する政策は雑である。屋根上太陽光と山林開発型メガソーラーは同じではない。既開発地利用と自然回復阻害型メガソーラーも同じではない。


 支援を厚くすべきものは、国土改変が小さい太陽光である。


 住宅屋根。工場屋根。倉庫屋根。公共施設屋根。駐車場上。工場跡地。埋立地。既開発地。自家消費型設備。災害時の補助電源として機能する設備。


 一方、支援を縮小・停止すべきものは、国土改変が大きく、保守・廃棄・災害リスクが重い大規模地上設置型である。報道では、日本政府が自然環境・安全・景観保護を目的に、大規模地上設置型太陽光へのFIT/FIP支援を2027年度から見直す方向だとされている。これは、太陽光支援を立地と規模で分ける考え方として妥当である。


 第十に、住民合意と自治体の権限を強化すべきである。


 メガソーラーは地域に影響する。景観、水源、災害、道路、治安、撤去後の土地利用に関わるため、事業者と行政だけで決めるべきではない。


 少なくとも、一定規模以上のメガソーラーでは、住民説明会、意見募集、自治体への詳細計画提出、災害時対応計画の公開、撤去費用の開示を義務化すべきである。


 ただ説明会を開けばよいという話ではない。


 説明と納得は違う。


 住民側が確認できる情報として、次を公開すべきである。


 設置場所。開発面積。伐採・造成の有無。排水計画。災害リスク評価。事業者名と親会社。資本関係。使用部材。保守業者。撤去費用。廃棄計画。盗難対策。事故時連絡先。事業譲渡時の責任継承。


 これらが見えない事業は、地域にとってリスクが高い。


 第十一に、分割開発・名義分散への対策が必要である。


 規制には面積や出力の基準がある。そうなると、事業を分割し、複数案件に見せかけることで、規制を逃れようとする可能性がある。これは太陽光に限らず、土地利用規制では一般に起こり得る問題である。


 したがって、実質的に一体の事業と見なせる場合は、合算して規制対象にすべきである。


 同一事業者。同一土地所有者。隣接地。同一時期の開発。同一送電接続。同一保守契約。同一資本関係。同一施工業者。


 こうした実態を見て、分割規制逃れを防ぐ必要がある。


 第十二に、発電終了後の土地利用計画を事前に義務化すべきである。


 メガソーラーは土地を長期占有する。だから、終わった後に土地をどうするのかを、設置前に決めておく必要がある。


 撤去後に植林するのか。

 草地として回復させるのか。

 農地に戻すのか。

 別用途へ転用するのか。

 地盤や排水をどう維持するのか。

 自然回復をどの期間で見るのか。

 誰が費用を負担するのか。


 これを曖昧にしたまま設置を認めるべきではない。


 特に火災跡地、伐採跡地、高原、草地、自然回復可能地では、発電終了後の回復計画を義務化すべきである。メガソーラーによって自然回復の時間を止めたのなら、終わった後の回復責任も事業者側が負うべきである。


 以上を踏まえると、政策提言は次の形に整理できる。


 一、山林開発型・斜面造成型メガソーラーの原則厳格制限。


 二、自然回復可能地への大規模設置の規制対象化。


 三、土砂災害警戒区域、水源地、急傾斜地、自然公園周辺での原則禁止。


 四、撤去・廃棄・原状回復費用の事業開始時点での保証。


 五、事業者倒産・譲渡時の責任継承制度。


 六、供給網依存率と交換部品調達計画の開示。


 七、火山灰・豪雨・台風・地震・積雪を含む災害リスク評価の義務化。


 八、盗難・防犯計画の義務化。


 九、リサイクル・適正処理の義務化。


 十、屋根上・既開発地型への支援集中。


 十一、大規模地上設置型への支援縮小。


 十二、住民合意と自治体権限の強化。


 十三、分割開発・名義分散による規制逃れの防止。


 十四、発電終了後の土地回復計画の義務化。


 メガソーラー政策で最も危険なのは、発電量やCO₂削減だけを見て、国土、災害、保守、廃棄、供給網、地域負担を後回しにすることである。


 制度はすでに強化されつつある。


 それは、問題が存在するからである。


 もし本当に安全で、合理的で、地域と共生できる事業なら、これほど多くの後追い規制は必要にならない。


 太陽光発電を否定する必要はない。


 しかし、太陽光発電という看板で、山林開発型・大規模設置型メガソーラーのリスクを覆い隠してはならない。


 日本に必要なのは、再エネの量を増やすことだけではない。


 日本の国土条件に合った再エネを選ぶことである。


 そのためには、国土改変の少ない太陽光を優先し、国土リスクを増やすメガソーラーを厳しく制限する。


 これが、現実的な政策判断である。


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