春の一枚
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春。
校庭の桜は少しずつ葉桜へ変わり始めていた。
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ホームルーム。
先生が教室へ入ってくる。
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「今日はクラス写真を撮ります」
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教室が少しだけざわつく。
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「校庭に移動してください」
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「はーい!」
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子どもたちは楽しそうに外へ出ていく。
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校庭。
カメラの前に並び始める。
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「背の順で並んでねー」
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先生が声をかける。
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海人も自分の場所へ向かう。
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その隣には、
茉白が立った。
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「隣だね」
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「……だな」
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少しだけ照れくさい。
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「もう少し詰めてくださーい」
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カメラマンが笑顔で言う。
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子どもたちが少しずつ横へ寄る。
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「海くん」
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「ん?」
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「もうちょっと」
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茉白が小さく笑う。
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海人も半歩だけ近づいた。
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肩が少しだけ近くなる。
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(……近ぇ)
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少しだけ意識してしまう。
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「はい、笑ってー!」
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みんなが前を見る。
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その時。
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風が吹いた。
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ふわり。
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茉白の長い髪が揺れて、
海人の肩に少しかかった。
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「……」
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一瞬だけ固まる。
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茉白は気づいていない。
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「はい、撮りまーす!」
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カシャッ。
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一枚目。
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「もう一枚いきます!」
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「今度はもっと笑ってー!」
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友達がふざけて変顔を始める。
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「あはは!」
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教室のみんなが笑い出す。
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茉白も思わず笑った。
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その笑顔を見て、
海人も少しだけ笑う。
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カシャッ。
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二枚目。
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「ありがとうございました!」
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撮影が終わる。
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子どもたちは自由に動き始めた。
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「海くん」
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「なに」
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「ちゃんと笑ってた?」
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「……少しだけな」
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「ふふっ」
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茉白が笑う。
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「写真できるの楽しみだね」
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「そうか?」
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「うん!」
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嬉しそうにうなずく。
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その笑顔につられて、
海人も少しだけ口元が緩んだ。
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(……まあ)
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(悪くねぇか)
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春の空の下。
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この日撮った一枚の写真には、
まだ何も知らない二人の、
自然な笑顔が写っていた。
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それは二人にとって、
何気ない学校生活の一日。
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けれど、
いつか振り返る日が来る、
大切な思い出の一枚になるのだった。




