放課後
放課後。
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「今日さ」
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「ん?」
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「海くんの家、行っていい?」
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一瞬、止まる海人。
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(……は?)
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「……別にいいけど」
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内心ちょっと動揺。
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(なんでだよ急に)
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でも断る理由もない。
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「じゃあ行く」
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いつもの調子の茉白。
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■海人の家
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「ただいま」
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「おかえりー」
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母の声。
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「……おじゃまします」
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少しだけ緊張してる茉白。
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「いらっしゃい」
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母がやさしく笑う。
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リビングへ。
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「ここ」
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「へぇ」
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きょろきょろ見る茉白。
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そのとき——
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「にぃちゃ…」
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小さな声。
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「……あ」
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海里がトコトコ歩いてくる。
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茉白、ぱっと顔が明るくなる。
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「この子可愛いー!」
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しゃがみこむ。
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「ねえ海くん、この子名前は?」
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「……海里」
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「海里って言うんだー!」
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にこっと笑う。
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(……なんで呼び捨てなんだよ)
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海人、心の中でぼそっと思う。
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(普通“くん”だろ)
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でも口には出さない。
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「うみさと?」
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「ちげぇ、かいり」
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「かいりかー」
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「かわいいね」
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海里、じーっと茉白を見る。
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そして——
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「……ましろー」
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「え?」
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一瞬で名前呼び。
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「ましろー!」
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笑顔で近づく。
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「え、すご」
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「なんで名前知ってんの」
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「……知らねぇよ」
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でも、
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(なんだよそれ)
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ちょっと面白くない。
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■懐かれる海里
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海里が茉白にぴたっとくっつく。
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「ましろー、あそぼ」
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手を引く。
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「いいよ」
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即答。
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(おい)
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海人、少しだけ眉をひそめる。
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(俺にはあんな来ねぇのに)
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なぜか引っかかる。
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「これなに?」
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おもちゃを指さす茉白。
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「くるま!」
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「へぇー」
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二人で遊び始める。
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楽しそう。
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(……なんなんだよ)
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見てるだけになる海人。
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(俺の家だぞ)
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なのに、
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(なんであいつ中心なんだよ)
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よく分からないモヤモヤ。
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■ちょっとした嫉妬
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「にぃちゃー!」
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海里が茉白から離れて、
海人の方に来る。
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「……なんだよ」
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「これやって」
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おもちゃを渡される。
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海人がやると、
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「すごーい」
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茉白が笑う。
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その一言。
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(……は?)
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胸、ドクン。
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「べつに普通」
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すぐそっぽ向く。
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でも。
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(なんであいつに褒められてんだよ)
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嬉しいのに、
ムカつく。
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(意味わかんねぇ)
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■三人の空気
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気づけば、
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三人で遊んでる。
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海里が笑って、
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茉白が笑って、
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海人が少しだけ混ざる。
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(……悪くねぇな)
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ふと思う。
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(こいつがいると、なんか変わる)
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家の空気。
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時間の流れ。
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全部、
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少しだけ、
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やわらかくなる。
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■帰り際
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「またね、海里」
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「ましろー!」
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手を振る海里。
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「……また来るのかよ」
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ぼそっと言う海人。
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「来るけど?」
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当たり前みたいに返す。
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「……そうかよ」
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でも、
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(……来いよ)
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心の中では、そう思ってる。




