夕飯の時間、ちょっと照れる空気
食卓。
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「いただきます」
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「いただきます」
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海人、少しだけ背筋を伸ばして座る。
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(……なんかちゃんとしねぇと)
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いつもより静か。
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「海人くん、これ取って」
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「あ、はい」
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母に言われて、皿を渡す。
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「ありがと」
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「……いえ」
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ぎこちない。
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その横で——
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「海くん、それ好きでしょ」
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茉白がさらっと言う。
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「……は?」
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「前食べてたじゃん」
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(覚えてんのかよ)
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「……別に普通」
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「はいはい」
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少し笑う茉白。
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そのやり取りを見て、
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父がくすっと笑う。
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「ほんと仲いいな」
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「だから普通だって」
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即答する海人。
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「普通だよ」
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茉白も同じように返す。
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でも——
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その“普通”は、
もう前とは違う。
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食事が進む。
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「海人くん、学校どう?」
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父が聞く。
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「……普通です」
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「茉白はどうだ?」
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「普通」
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同じ答え。
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(なんだよそれ)
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海人、少しだけ思う。
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でも。
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横を見る。
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茉白が、普通にご飯食べてる。
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(……これが普通か)
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少しだけ、
納得する。
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■帰り道、少しだけ特別
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玄関。
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「ごちそうさまでした」
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「またおいで」
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母。
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「いつでもいいぞ」
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父。
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「……はい」
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外に出る。
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夜に近い空気。
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少しひんやりしてる。
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並んで歩く。
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「どうだった?」
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「なにが」
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「ご飯」
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「……うまかった」
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「でしょ」
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少し得意げ。
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「……あと」
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「?」
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「なんか」
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少しだけ言葉を探して、
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「落ち着く」
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ぽつり。
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茉白、少しだけ止まる。
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「……そっか」
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それだけ。
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でも——
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(……うれしい)
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少しだけ、胸があたたかい。
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■夜、それぞれの時間
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●海人
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ベッドの上。
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天井を見てる。
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(……なんなんだよ今日)
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思い出す。
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夕飯
会話
空気
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(……家ってあんな感じか)
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自分の家とは違う。
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でも、
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(……悪くねぇ)
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というか——
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(……また行きてぇ)
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少しだけ笑う。
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(……あいついるしな)
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それが一番しっくりくる理由。
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●茉白
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ベッドの上。
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髪を軽くいじりながら、
ぼーっとしてる。
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(……今日)
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海人が家にいた。
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一緒にご飯食べた。
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(……変な感じ)
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でも——
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(……楽しかった)
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静かに思う。
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「海くん」
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小さく名前を呼ぶ。
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(……また来てほしい)
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それが自然に出てくる。
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まだ言葉にはしないけど、
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少しずつ、
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“特別”が当たり前になっていく。
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■今のふたり
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まだ告白はしてない。
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でも——
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・家に来るのが当たり前
・一緒にご飯食べる
・落ち着く場所になる
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完全に、
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“ただの友達”は越えてる。
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