少し変わったふたり
春。
また新しい教室。
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「同じクラスだ」
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茉白が小さく言う。
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「……だな」
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海人も頷く。
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席は少し離れてる。
でも、前より不思議と遠く感じない。
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そのとき。
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(……あ)
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海人の視線が止まる。
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茉白。
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髪が、伸びてる。
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肩よりずっと下。背中。
風で少し揺れる。
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(……なんだそれ)
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前と違う。
でも——
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(……似合ってんな)
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心の中でだけ、そう思う。
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もちろん、口には出さない。
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「なに」
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茉白が気づく。
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「……別に」
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いつもの返し。
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でも、少しだけ視線が逸れるのが早い。
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茉白は少しだけ首をかしげる。
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(また変)
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でも、
前よりちょっとだけ分かる。
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(……なんか見てた)
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理由は分からないけど、
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(……まあいいか)
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でも少しだけ、
嬉しい。
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■また、家に誘う
放課後。
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「海くん」
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「なに」
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「今日さ」
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少しだけ間。
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「うち来る?」
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海人、止まる。
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(またか)
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でも——
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(……行くに決まってんだろ)
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「……行く」
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茉白、少しだけ笑う。
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「じゃあ決まり」
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■家にて
玄関の前。
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前より、少しだけ慣れてる。
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でも——
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(やっぱ緊張する)
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ピンポン。
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ガチャ。
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「はいはーい」
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ドアが開く。
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「あら、海人くん」
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母。
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その後ろから——
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「お、来たか」
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父。
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「いらっしゃい」
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「いらっしゃい、海人くん」
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二人そろって迎える。
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「……お邪魔します」
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前より少しだけちゃんとしてる。
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靴を揃えて上がる。
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(なんか増えてる)
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前は母だけだった。
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今日は父もいる。
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「上がって上がって」
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「ありがとう」
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リビングへ。
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父がちらっと海人を見る。
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「仲いいな」
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「……別に」
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即答。
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「そうか?」
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少し笑う父。
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横で茉白が、
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「普通だよ」
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さらっと言う。
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(普通ってなんだよ)
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少しだけ引っかかる。
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でも——
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(……それでいいか)
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ふと。
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茉白の髪が揺れる。
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(……やっぱ)
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(似合ってる)
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また思う。
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今度は少しだけ強く。
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でも、
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やっぱり言わない。
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ただ、
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前より少しだけ、
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長く見てしまう。
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茉白はそれに気づいて、
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「……なに」
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「……なんでもねぇ」
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またそれ。
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でも、
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その“なんでもない”の中に、
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前より少しだけ、
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意味が増えていた。
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