桜のつぼみ
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三月。
修了式まで、あと一日。
春らしい暖かな風が吹いていた。
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放課後。
いつものように海人と茉白は並んで歩いていた。
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「今日はあったかいね」
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「もう春だからな」
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道を歩いていると、
公園の入り口にある大きな桜の木が目に入った。
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「海くん」
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「ん?」
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「見て」
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茉白が桜の枝を指さす。
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「つぼみ」
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まだ花は咲いていない。
でも、小さなつぼみがたくさんついていた。
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「ほんとだ」
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海人も見上げる。
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「もうすぐ咲くんだね」
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「三年生になる頃かな」
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茉白は少し嬉しそうに笑う。
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「入学した時も、この桜咲いてたよね」
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「ああ」
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「あの時はランドセルが大きかったな」
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「海くん、すぐ走って行っちゃったよね」
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「そんなことあったっけ?」
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「ふふっ、あったよ」
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二人は顔を見合わせて笑う。
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風が吹き、
枝がゆっくり揺れる。
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「来年も」
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海人がぽつりと言う。
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「ここで桜見ような」
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茉白は少し驚いたあと、
やさしく笑った。
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「うん」
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「三年生になっても」
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「その次も」
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海人は照れながら笑う。
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「約束だからな」
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「うん、約束」
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二人は桜の木をもう一度見上げた。
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まだ咲いていない桜。
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でも、
そのつぼみは春が来ることをちゃんと知っていた。
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海人と茉白も、
これから先も一緒に笑っていられると、
そんな未来を当たり前のように信じていた。
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穏やかな春の風が、
二人の間を優しく吹き抜けていった。




