最後の席替え
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三月。
修了式まで、あと数日。
教室には春のやわらかい日差しが差し込んでいた。
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先生が笑顔で言う。
「今日は二年生最後の席替えをします!」
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「やったー!」
「どこになるかな!」
教室は一気ににぎやかになる。
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海人は小さく息をつく。
(最後か)
ふと、茉白の方を見る。
茉白も少しだけ緊張した顔をしていた。
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くじ引きが始まる。
一人ずつ新しい席へ移動していく。
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海人は自分の番号を見る。
「ここか」
窓側の一番後ろ。
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茉白も席を確認する。
「あっ」
教室の反対側。
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二人の席は、
今までで一番離れてしまった。
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「残念だったね」
友達が茉白に話しかける。
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「うん……」
小さく笑う。
でも少しだけ寂しかった。
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海人も遠くの席から茉白を見る。
(遠いな)
そう思った。
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授業が始まる。
先生の話を聞きながらも、
ふと目線は教室の反対側へ向く。
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その時。
茉白も同じように顔を上げた。
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目が合う。
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一瞬だけ。
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茉白は小さく笑う。
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海人も笑い返す。
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それだけで、
少しだけ寂しさが消えた。
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昼休み。
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「海くん!」
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茉白が教室を横切ってやって来る。
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「席、遠くなっちゃったね」
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「だな」
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「でも」
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茉白は笑う。
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「休み時間は来られるもんね」
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海人も笑った。
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「そうだな」
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「席は離れても」
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「友達なのは変わらないし」
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その言葉に、
海人は安心したようにうなずく。
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放課後。
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いつもの帰り道。
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「今日さ」
海人が話し始める。
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「席替えしたのに」
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「結局ずっと話してたな」
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茉白はくすっと笑う。
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「ほんとだ」
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「席は関係なかったね」
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「うん」
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二人は顔を見合わせて笑った。
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教室では少し遠くなった。
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でも、
心の距離は、
昨日までと何も変わっていなかった。




