修了式まであと少し
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三月。
修了式まで、あと一週間。
教室には少しだけいつもと違う空気が流れていた。
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先生が黒板に大きく書く。
「一年間の思い出」
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「今日は、この一年で一番楽しかったことを発表してもらいます」
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子どもたちは次々と手を挙げる。
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「遠足!」
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「運動会!」
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「雪遊び!」
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教室は楽しそうな声でいっぱいだった。
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海人は少し考える。
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(楽しかったことか……)
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頭に浮かぶのは、
遠足。
秘密基地。
夏祭り。
雪だるま。
そして――
茉白と笑っていた時間。
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「海人くん」
先生に名前を呼ばれる。
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「はい」
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「何が一番楽しかったですか?」
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海人は少しだけ照れながら答えた。
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「……友達と遊んだことです」
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「毎日、楽しかったです」
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先生は笑顔でうなずく。
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「いい思い出ですね」
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海人は席へ戻る。
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次は茉白。
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「茉白さんは?」
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茉白は少しだけ考えて、
にっこり笑った。
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「わたしも」
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「友達と過ごした毎日です」
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「毎日が楽しかったです」
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そう答えながら、
ほんの少しだけ海人の方を見る。
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海人もその視線に気づく。
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目が合う。
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二人とも少し照れて、
すぐに前を向いた。
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放課後。
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いつもの帰り道。
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「今日の発表さ」
海人が話し始める。
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「友達って言ってたな」
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「うん」
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「本当だもん」
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茉白は笑う。
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「海くんもいたし」
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海人は少し驚く。
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「……俺も」
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「え?」
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「毎日、楽しかった」
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短い言葉。
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でも、
それだけで十分だった。
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夕焼けの帰り道。
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ランドセルを背負った二人の影が並ぶ。
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修了式まで、
あと少し。
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二年生として過ごす毎日を、
二人はいつも以上に大切に感じ始めていた。




