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秋。


空が高くなって、保育園の木も少しずつ色づき始めていた。


その日は、みんなでどんぐり拾いをしていた。


「見てー!でっかい!」


「こっちいっぱいある!」


子どもたちは夢中で地面を探している。


海人も走り回りながら、大きなどんぐりを集めていた。


「これ絶対おれが一番!」


「ずるい!先に取った!」


相変わらず騒がしい。



少し離れたところ。


茉白はしゃがみ込んで、小さな葉っぱを見ていた。


赤、黄色、オレンジ。


色の違う葉を並べている。


「ましろ、それどんぐりじゃねーじゃん」


急に後ろから声。


振り返ると海人だった。


両手いっぱいにどんぐりを抱えている。


「葉っぱ見てたの」


「なんで?」


「きれいだから」


海人は「ふーん」と言いながら葉っぱを見る。


正直、よくわかってない顔。


でも馬鹿にはしない。


「それ、赤いな」


「これはオレンジ」


「同じだろ」


「違う」


即答。


海人は少し笑う。


「細か」


「海人が適当すぎるだけ」


「なんだそれ」



その時。


先生の声が響く。


「そろそろ戻るよー!」


「はーい!」


子どもたちが一斉に走り出す。


海人も行こうとして——


ふと止まる。


茉白が立ち上がった時、小さく顔をしかめたのが見えた。


「……どうした?」


「え?」


「足」


茉白は少し黙る。


どうやらしゃがんでいる時に、小枝で足を擦ったらしい。


小さな傷。


でも少し痛そう。


「べつに平気」


そう言って歩こうとする。


でも、その瞬間。


ぐい、と手を引かれた。


「うわっ」


海人だった。


「転ぶぞ」


「……」


茉白は目を丸くする。


海人はそのまま普通に歩き始める。


まるで特別なことをしてる感覚がない。


「先生んとこ行けば?」


「これくらい平気」


「でも血出てる」


「……ちょっとだけ」


海人は少し眉を寄せる。


「痛ぇなら痛いって言えよ」


その言い方はぶっきらぼうだったけど、


なんだか不思議と優しかった。



保育園へ戻る道。


海人はずっと手を離さなかった。


茉白も、「離して」とは言わなかった。



でも教室が見えた瞬間、


海人は急にぱっと手を離す。


「ほら、行くぞ」


少し照れくさそうに前を向く。


茉白はその横顔を見て、


なんとなく胸がむずむずした。


まだ意味はわからない。


でも、


海人といると、前より少しだけ心が動く。



そして海人も。


さっき握った小さな手の感触が、


なんとなく頭に残っていた。

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