いつもの席
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朝。
教室には子どもたちの元気な声が響いていた。
海人も友達と話しながら教室へ入る。
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「おはよう!」
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ランドセルを机に置こうとした、その時。
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(……あれ)
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茉白の席を見る。
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誰もいない。
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「まだ来てないのか」
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いつもならもう座っている時間だった。
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ホームルームが始まる。
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先生が出席を取る。
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「茉白さんは、風邪でお休みです」
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その一言で、
海人は少しだけうつむいた。
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(風邪か……)
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授業が始まる。
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先生の話を聞いていても、
ふと前の席を見てしまう。
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空っぽの机。
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休み時間。
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友達に誘われて校庭へ行く。
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「海人!サッカー!」
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「……おう」
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返事はする。
でも、
どこか元気がない。
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「どうした?」
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「なんでもねぇ」
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笑ってごまかす。
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昼休み。
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教室へ戻る。
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窓際から外を見る。
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(早く元気になればいいのに)
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その言葉が、
自然と心に浮かんだ。
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放課後。
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一人で帰り道を歩く。
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いつもなら、
隣にいるはずの茉白。
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今日はいない。
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(静かだな)
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何気ない帰り道なのに、
少しだけ長く感じた。
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翌朝。
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教室のドアが開く。
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「おはよう」
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聞き慣れた声。
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海人はすぐに振り向く。
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茉白が立っていた。
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「海くん、おはよう」
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少しだけ元気はないけれど、
ちゃんと笑っている。
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海人はほっと息をつく。
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「もう大丈夫なのか?」
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「うん」
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「昨日より元気!」
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その笑顔を見て、
海人も自然と笑った。
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「よかった」
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その一言は、
思っていたより優しかった。
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茉白は少し照れながら笑う。
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「心配してくれた?」
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「……まぁ」
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海人は照れ隠しに頭をかく。
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「風邪うつすなよ」
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「もう治ったもん」
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「ならいい」
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二人は顔を見合わせて笑う。
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たった一日。
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それだけ会えなかっただけなのに、
海人は気づいてしまった。
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いつもの席に、
茉白がいる。
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それだけで、
なんだか安心することを。




