秘密基地の約束
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休日の午後。
青空の下、海人は秘密基地へ向かって走っていた。
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「茉白ー!」
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木々の向こうから顔を出した茉白が手を振る。
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「海くん!」
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「待った?」
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「今来たところ」
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二人は顔を見合わせて笑う。
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秘密基地は、小学一年生の夏に二人で見つけた場所。
今でも誰にも教えていない、二人だけの秘密だった。
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「今日は何する?」
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海人が周りを見回す。
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「秘密基地らしくしたい!」
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「秘密基地らしく?」
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「うん!」
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二人は落ちていた枝を集めたり、大きな石を運んだりしながら遊び始める。
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「ここ、椅子みたい!」
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茉白が切り株に座る。
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「じゃあ俺はこっち」
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海人も向かいに座った。
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「なんか、本当に秘密基地みたい」
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「だろ?」
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海人は少し得意そうに笑う。
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風が吹く。
葉っぱがさらさらと揺れる。
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しばらく静かな時間が流れた。
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茉白がぽつりと言う。
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「ここ、好き」
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「俺も」
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海人はすぐに答えた。
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「学校と違って静かだし」
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「うん」
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「海くんとゆっくり話せるし」
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その一言に、
海人は少しだけ照れる。
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「……そうだな」
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少しの沈黙。
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海人は地面に小さな枝で丸を描きながら言った。
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「さ」
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「ん?」
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「これからもさ」
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「毎年、ここ来ようぜ」
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茉白は目を丸くする。
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「毎年?」
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「うん」
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「大きくなっても」
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「またここで遊ぼう」
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その言葉に、
茉白は嬉しそうに笑った。
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「約束?」
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「約束」
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海人は小指を差し出す。
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茉白も笑いながら小指を重ねた。
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「指切り」
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「げんまん」
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二人は笑い合う。
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その時だった。
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木の枝に止まっていた小鳥が飛び立つ。
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「びっくりした!」
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茉白が少し驚いて海人の方へ寄る。
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肩が軽く触れる。
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「……」
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「……」
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二人とも少しだけ照れる。
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でも今回は離れなかった。
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少しだけ近い距離のまま、
一緒に笑った。
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夕方。
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帰る時間になる。
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秘密基地を振り返る。
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「また来ようね」
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「絶対な」
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二人だけの秘密。
二人だけの約束。
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この場所は、
まだ誰にも知られていない。
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でも、
海人と茉白にとっては、
世界で一番大切な場所になり始めていた。




