夕焼けの帰り道
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放課後。
チャイムが鳴り、子どもたちが次々と教室を出ていく。
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「海くん」
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ランドセルを背負った茉白が声をかける。
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「一緒に帰ろ」
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海人は笑ってうなずく。
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「おう」
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校門を出る。
夕日が町をオレンジ色に染めていた。
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二人はゆっくり歩く。
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「今日の体育、疲れたね」
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「リレー、速かったな」
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「海くんも速かったよ」
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「そうか?」
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「うん」
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他愛もない話。
それだけなのに楽しい。
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少し歩くと、小さな公園が見えてきた。
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「ちょっと寄る?」
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「いいよ」
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ブランコに並んで座る。
ギーッ、ギーッと鎖が揺れる音だけが聞こえる。
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「もう二年生なんだね」
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茉白が空を見上げる。
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「早いよな」
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「保育園の時は、こんなに大きくなるなんて思わなかった」
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海人は少し笑う。
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「茉白、あの頃とあんまり変わんねぇな」
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「えー?」
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「ひどい」
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少しだけ頬をふくらませる。
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「いい意味だよ」
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「……どういう意味?」
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海人は少し考える。
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「そのまんまってこと」
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「優しいし」
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「笑うと安心するし」
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言った瞬間。
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「あ……」
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自分で照れてしまう。
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「いや、違っ……」
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言い直そうとする。
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茉白は少し驚いたあと、
ふわっと笑った。
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「ありがとう」
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その笑顔を見て、
海人も照れながら笑う。
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夕焼けの光が、
二人をやさしく包む。
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帰る時間。
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「また明日ね」
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「おう」
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歩き始める。
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少しだけ風が吹いた。
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その風に、
茉白の髪がふわっと揺れる。
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海人は少しだけ立ち止まり、
その後ろ姿を見つめる。
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(やっぱり)
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(一緒に帰るの、好きだな)
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一方の茉白も、
少し前を歩きながら思っていた。
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(海くんと帰る時間って)
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(なんか、落ち着く)
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夕焼けは少しずつ夜へ変わっていく。
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特別な出来事は何もなかった。
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それでも、
二人にとっては忘れたくない、
大切な帰り道になっていた。




